面接には学歴信仰の幻想がつきもの

 私なりの分析結果ですが、頭脳明晰で話の筋が通っていることが共通項です。採用面接で、どういう質問に対しても要領よく答えて、選考員を見事に説き伏せて高い評価を得たのだと推測します。

 知力の高さは、その人の能力や個性の一つであり、それは評価されるべきです。ただ、社会で起こる問題、業務遂行上で起こる課題は知力だけでは解決できません。むしろ、よりよい人間関係を構築し、他者の力を借りて解決するほうが多いはずです。そこに信頼関係がないと人と人は繋がりません。そして、信頼を生むには思いやりや謙虚さ、柔軟性といった心の在り様が大事です。

 採用選考はEQ(心の知能指数)と呼ばれる「他者の感情を感じ取る能力、自分の感情を統御できる能力」を持っているかどうかに大きな比重を置かなければならないと思います。

 しかし、EQを計測する確固たる方法はありません。昔から面接が有効な方法として採用選考の柱として実施されてきましたが、ややもすると知性を感じさせるIQ的な要素が優先されてしまいます。

 質問に的確に答えたとか、頭の回転が速かったとか、知能の働きの良さを面接の当落の判断にしがちです。意識する、しないにかかわらず、誰しも多かれ少なかれ学歴信仰の幻想を抱いているからです。これが面接の難しさです。

 私は全集中でEQに着目して選考してきました。私だけが合否を決めているわけではありませんが、選考に関わった多くの社員が活躍しており、「EQ>IQ」という私なりの判断は概ね間違っていなかったと思っています。