最初にまず、小学4年生の問題を出しますので、考えてみてください。

「上の図形に含まれるすべての四辺形を列挙せよ」という小学生向けの問題です。

 答えはあえて書きませんが、率直に言って相当の難問です。私自身は日曜の夜に考え始めてそのまま眠ってしまいました。

 朝改めて系統だって解を作り、模範解答を準備したところで、ここでも「出題」しています。

 この問題が載っているのは、日本近代教科書の最高傑作として名高い緑表紙「尋常小学算術」4年生用のテキストです。

 この問題を解くのに「数式」は必ずしも要りません(ただし、実際に解いた感想としては数式を使った方が遥かに楽でした)。

 しかし「必要かつ十分」にすべての解を挙げ尽す論証は極めて論理的、数理的で、現実の生活にも役立つ示唆が数多く含まれています。

 ロジカル・シンキングやアルゴリズムのお手本のような、でも小学生にも出題可能な良問です。

 今回は、ここ25年来、東京大学で情報、数理、物理、統計などを教えてきた一教官の観点から、なぜ日本人は算数、数学を生活に生かせないか、構造的な理由がハッキリ存在するので、それを解説しましょう。

 今後AIが普及する社会で現行50%からの職種が消失、雇用そのものの蒸発が分かっている状況下、日本人の大半が「算数・数学」を苦手とする状況は、国難と言って大げさでない状況にあります。

 その元凶を去り、まともな教程に戻すことを東大教官有志などで相談しています。