フィンランドの首都ヘルシンキの沿岸沿いに設置された大砲

 世界有数の教育先進国として知られるフィンランドが、義務教育年齢の18歳までの引き上げを発表(https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2022/05/18-29.php)、従来から大学、大学院まですべて授業料は無料だったものが、日本で考えれば高校卒業段階までの義務教育化で、学食の費用までタダになるとのこと。

 フィンランドは長年、国連の行う「世界幸福度調査」でもランキング1位が続いており(https://forbesjapan.com/articles/detail/46614)、生活水準が高い、犯罪率の低い、自然のあふれた国情が広く知られます。

 そんなフィンランドが正式にNATO(北大西洋条約機構)加盟申請(https://www.bbc.com/japanese/video-61503509)、「教育」「幸福」と並んで「戦争」「軍事」「安全保障」・・・。

 日本国内では違和感を感じられる読者が多いかもしれません。今回はこの点を深掘りしてみましょう。

 ちなみに本稿は在ヘルシンキでフィンランド日本大使館勤務も長かった元外交官の北川達夫星槎大学教授と議論しつつ準備しています。文責はすべて私にあります。

 北川氏は私の中学以来の後輩に当たります。「フィンランド教育」の第一人者というより、彼が紹介して日本にフィンランド教育ブームが起きたと表現する方が正確かと思います。

 ここでのカギは「国民総戦力化」。国民皆兵ではありませんが、発想は似通った部分があります。

発想の徹底:すべての国民を戦力に

 前回稿でも告知しましたが6月4日、上野公園内、東京都美術館で、AIのパイオニア甘利俊一教授、元文化庁長官の近藤誠一・国際ファッション専門職大学長などのパネリストをお招きし「教育立国・拠点形成シンポジウム」(https://www.schweitzerstreamm.com/symposium)を、上記の北川教授もパネリストに迎えて開催します。

 無料のZOOM(https://zoom.us/j/96966833583?pwd=aWMwclVJbFM3aUZ1c3ExUENlbjduUT09#success)も公開していますが、アクセス集中の可能性もあり、ご興味の方にはお申込みいただければ安全と思います。

 さて、フィンランドはなぜ「義務教育」を延長したのか?

 その背景には「世界一の教育先進国なりの、教育問題」が関係しているようです。

 OECDの学力調査PISA(の日本への導入初期から北川氏が尽力して成立した経緯があります)でコンスタントに上位を占め、ノキアなどグローバル情報企業も擁するフィンランドですが、数の計算能力などでは学力の伸び悩みや、低下の傾向も見られます。

 フィンランド「義務教育18歳延長」の一背景として「基礎学力の強化」を挙げられます。

 小数・分数の計算、百分率と割合といった小学校高学年程度の算数能力が、フィンランドでも、また大変残念な事実ですが、日本でも必ずしも高くない現実があります。