「若手登用」は戦場の知恵

 フィンランドでサンナ・マリン首相(36)に代表されるような若手登用が広く見られるのは「戦場の知恵」の側面があるようです。

 実際に敵と戦っている最中、優れた能力で軍功を挙げ、敵を殲滅し味方を守れば、若くても英雄、有能な人物に活躍の場を与えるのは、狩猟民族や軍事防衛的な感覚です。

 これに対して、ただ歳だけ取ってたら立場が上、目上は無条件に敬えといった風習は典型的に農耕型、停滞型、循環型の社会が見せる特徴です。

 ちなみに、大きな反響をいただいた前回稿(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/70304)に対して「フィンランドは議院内閣制で大統領はお飾り、マリン首相が元首級」と教えてくださった読者投稿が編集部にあったそうで、ヘルシンキ勤務も長い北川教授と顔を見合わせて苦笑せざるを得ませんでした。

 どうやらウィキペディアその他の日本語ネットメディアに「フィンランドは半大統領制」その他の記載があるらしく、いまだにこうした誤解が蔓延しているのかもしれませんので交通整理しておきます。

 まず制度面からですが、フィンランド憲法には 公的には「内閣」は(valtioneuvosto)として司法長官と首相を含む閣僚、「政府」(hallitus)として大統領に統括される内閣を示しています。

 大統領を含む「政府」(hallitus)が大統領を含めない「内閣」(valtioneuvosto)の2つの枠組みがあり、フィンランド大統領は 外交業務の主導権は内閣と共同で持ち、議論の余地のない国際合意や戦争や講和の決定を除いて議会に従いますが、基本、大統領は軍の最高司令官ですからNATO加盟など明らかな国際合意は大統領案件で、法の承認と特命議会を招集できます。

 大統領は議会で選ばれた首相を任命し、残りの内閣(国家評議会)の大臣は首相の提案によって選ばれ、大半の国事は内閣以下で処理されます。

 議会が若くて優秀な「遊撃手」、たとえ34歳の女性を首相に選出すれば、それを大統領が任命します。

 次にもう少し現実的な部分を記します。