スウェーデンとフィンランドのNATO加盟申請書を受け取ったNATOのイェンス・ストルテンベ事務総長(5月18日、写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 2022年5月、世界史が動き出したスウェーデン・フィンランドのNATO(北大西洋条約機構)加盟を深掘りしてみましょう。

 スカンジナビアの2か国によるNATO加盟申請への動きに対して、5月14日にベルリンで開かれたNATO外相会合でトルコの「チャブシオール外相」がスウェーデンのリンデ外相に声を荒らげる場面が発生。

「外交官として恥ずかしい事態」と同席する外交官から総すかんを食う事態となり、何とかせねばということで、チャブシオール氏の親分であるレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領が21日、スウェーデンのエーヴァ・マグダレナ・アンデション首相、フィンランドのサウリ・ニーニスト大統領と電話会談。

 トルコとしては対面を保ちつつ、実質的には陳謝する事態となったわけですが・・・。

「フェミニズム外交」呼ばわりのトルコ外相

 いや、無理もないのです。このメヴェリット・チャブシオール氏(1968-) 、外務大臣と称してはいますが、外交官でも何でもない。

 ロシアのセルゲイ・ショイグ「国防大臣」が軍人でも何でもなく、ウラジーミル・プーチン腹心で大衆に人気のある政治家というのと同じで、トルコの党人ポリティシャン、外交は基本素人と言ってよい人物です。

 トルコで大学卒業後、ニューヨークのロングアイランド大学で経済学の修士を取得後、33歳でエルドアン現大統領が旗揚げしたイスラム系のトルコ「公正発展党」結党に参加。

 2002年に国会議員当選、2010年から2年間は42歳という年齢で欧州評議会議員議会の議長に選出されたので、退任後「外務大臣」に就任。

 ウクライナ戦争では「ヒトラーユダヤ人説」で失脚しつつある例の「ラブロフ」ロシア外相と、ウクライナの若いドミトロ・クレーバ外相とを繋ぐなど、トルコがキャスティングボートを握ろうとした面がありますが、今回のことでこれは水泡に帰した可能性が高い。

 この、中身はズブズブの国内向け党人政治家チャブシオール氏、スウェーデンの女性閣僚であるアン・クリスティン・リンデ外相に対して、あろうことか「フェミニスト的な政策」呼ばわりの暴言を吐き、予想外の事態に発展してしまいました。