就職活動にはリクルートスーツという“常識”はいまも続く(写真:アフロ)

人材の「流動化」「多様性」を求める声が経済界から強くなっている。これは人材育成がうまく機能していない表れだろう。企業は安定志向の下、学歴や人柄で新卒採用を続けてきたが、見直す時期に来ているのかもしれない。変わりゆく外部環境に対応できず、世界経済の中で日本は埋没しつつある。今後、どういう人材を育むべきか。

(岡部 隆明:就職コンサルタント、元テレビ朝日人事部長)

 日本経済は「失われた30年」と言われるほど長らく低迷しています。戦後に成長を遂げた企業は、その過程で確立したビジネスモデルにこだわり、変えようにも変えられないまま立ち往生しているように見えます。

 私は、まさにこの30年間、社会人生活を送り、テレビ局の記者として政官財の取材も経験しましたが、率直に言って、経済界も日本人もそれほど強い危機意識があったように思えません。一時は「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と呼ばれるほどの経済大国になった成功体験が染みついたまま過ごしてきた気がします。そして、「日本人の勤勉さや優秀さをもってすればなんとかなる」という不思議な自信が「変化」や「変革」をなおざりにしてきたのではないでしょうか。

 この手詰まり状況を打開するのは結局、人の力ですが、私たちは日本の未来を切り開く人材を生み出せるのでしょうか。

 7月7~8日に経済同友会が日本の将来像を議論する夏季セミナーを開きました。集まった企業トップは、日本経済の浮揚策として「人材の流動化」「イノベーション創出」などを柱とする政策提言を打ち出しました。

 経済社会にメスを入れる箇所はたくさんあるのでしょうが、「人材の流動化・多様性」といった「人」に関わる領域の改善策を訴える声が最近、目立ってきています。

 7月8日の読売新聞によると、このセミナーの中で、サントリーホールディングスの新浪剛史社長は「若い世代の野心にスイッチを入れる必要がある」と語ったそうです。