訪日外国人の増加に伴い免税店も増えている(写真:yoshi0511/Shutterstock.com)

2024年はインバウンド(訪日外国人旅行)に沸いた1年でした。円安の恩恵を背景に「安い日本」を目指す外国人は急増。訪日観光客は1964年の統計開始以来、最速で3000万人超えを達成しました。訪日客向けに価格を高くした海鮮丼は“インバウン丼”と呼ばれ、2024年の流行語大賞にノミネートされたほどです。こうした賑わいの一方、実は訪日客向けの「消費税免税」も焦点になりました。制度を悪用して大量の物品を国外に持ち出そうとする人や、日本側企業の申告漏れなどが続出したのです。そもそも「消費税免税」の制度や運用はどのようになっているのでしょうか。問題や改善の方向性は? 一挙にやさしく解説します。

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免税店、10年で10倍以上に

「消費税免税」とは、観光や商用、公用で日本を訪れる外国人に対して家電製品や時計、食品類、化粧品類などを販売する場合、消費税を免除して販売できる制度のことを指します。訪日客はそれら購入物品を国内で消費せず、国外に持ち出すことが前提です。

 制度そのものは、敗戦国・日本がサンフランシスコ講和条約によって国際社会に復帰した1952年に創設されました。当時、消費税は存在しませんでしたが、貴金属や宝石、毛皮製品、洋酒といった「ぜいたく品」「嗜好品」などに物品税がかかっていました。それが訪日客には免税となったのです。全国免税店協会によると、これは世界で最も古い「Tax-Free」制度。その仕組みは1989年の消費税導入時にも引き継がれました。

 その後、観光立国を目指すために制度を次第に拡充。対象品目を拡大し、消耗品も免税対象にしたり(2014年)、免税対象金額を「1万円超」から「5000円以上」に引き下げたり(2017年)するなど、これまでに都合7回の条件緩和・制度拡充を段階的に実施しています。

 百貨店や家電量販店、土産物品店などの店先で、日の丸に桜の花びらをあしらった「Japan Tax-Free Shop」(免税店)のマークを目にした人も多いと思います。「うちの店は10%の消費税がかかりません」は客に対して大きな誘引力を持っていますが、誰でも好き勝手に免税店になれるわけではありません。店舗側は所轄の税務署に届け出を行い、審査にパスして初めて免税店になることができます。

 この免税店は一連の制度改革で急増しました。2012年に全国で4173店に過ぎなかった免税店は、10年後の2022年に5万2227店。実に10倍以上です。

 2023年3〜9月の半年間に限っても、全国で約3000店が新たに免税店となりました。とくに都市圏を外れた地方でも万遍なく免税店が増えているのが特徴で、最も少ない島根県でも88店舗を数えています。