インバウンド消費、年1.4兆円

 こうした制度拡充の結果、日本の「免税品市場」は一気に拡大してきました。

 観光庁が公表している「訪日外国人の消費動向・2023年次報告」によると、訪日客による日本国内での消費は、総額5兆3065億円(推計)に達しました。出費の項目別では宿泊(34.6%)、買い物(26.5%)、食事(22.5%)。訪日客の国別の総額では、台湾、中国、韓国がトップ3です。1人当たりの平均支出額では21.3万円。国別に見ると、32万円以上のスペインやイタリア、英国などの欧州勢、中国などが上位に並びました。

図:フロントラインプレス作成
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 では、消費税免税の制度利用はどうなっているでしょうか。

 観光庁の同じ資料によると、2023年に消費税の免税手続きを実施した訪日客は全体の48.1%でした。2人に1人が消費税を払わずに物品を購入したことになります。

 国・地域別では、台湾、香港、中国が60%超。韓国、タイ、マレーシアの3カ国も50%を超えましたが、それ以外は50%に達していません。日本国内での消費額の大きい欧州や米国はいずれも10%台にとどまっており、買い物客の大半はアジアからの訪日客であることが鮮明になっています。

 民間シンクタンクの日本総研が2024年8月に公表したレポートによると、訪日外国人による免税物品の購入額は、足元で1兆円(年換算額)を上回って1.4兆円程度に達しています。品目別では、化粧品や香水、革製品などの高級品が消費を押し上げました。

 また、日本百貨店協会のデータによると、百貨店の免税売上高は2024年1~7月期に3978億円となり、10年前の2014年同期(330億円)と比べると、なんと12倍近くに拡大しました。

 コロナ禍前は中国人観光客による“爆買い”が大きな話題となりましたが、コロナ禍が明けてインバウンドが復活した現在、「安い日本でモノを買う」流れはさらに広がってきたことがうかがえます。