本当に「明らかに識別」できるのか

 しかし、理屈っぽいことを言えば、「これはCMです」という文言を入れなければわからないくらい、まぎらわしく作っているということです。少なくとも私は今回のCMを、CMだとは認識できず、ドラマの続きだと誤認しました。そして、これはJAROの言う「まぎらわしい ダメダメ!」そのものだと思ったのです。

「これはCMです」の表記に気づかなかった私の感度や注意力の問題かもしれません。ただ、放送法が定める「明らかに識別することができる」かどうかについては議論の余地や問題提起の意味があるような気がします。

 この件についてJAROに問い合わせてみたところ、次のような回答でした。

「放送局は考査して問題ないと判断しているはずですが、JAROは見解を述べるところではありません。ご指摘のCMを確認した上で、ご意見を広告主に伝えます」

 若者を中心に「タイパ(タイムパフォーマンス)」が言われて、いかに無駄な時間を費やすことなく効率的に過ごすのかに重きが置かれている昨今です。自分のタイムスケジュールで見られない地上波放送やBS・CS放送は「タイパ」に合わないということで、YouTubeや動画配信に関心が向いています。

 そうした中で、テレビCMをより多くの視聴者に確実に見て欲しいというスポンサーの思いは理解できます。そして、CMの訴求力や広告効果を高めようと、あれこれと知恵を絞るのもわかります。

 それでも、業界の自主規制や努力義務を脇に置いたような、法律スレスレ、もしかしたら触れてしまっているのではないか、と感じさせる悪知恵みたいな手法は避けるべきではないでしょうか。