価格高騰を続ける首都圏の新築マンション(写真はイメージ)

(山下 和之:住宅ジャーナリスト)

 首都圏の新築マンション価格が高止まりしている。平均的な所得の会社員にはとても手が出ない物件が多いのに、それでも高騰し続けているのはなぜか──。その理由を探ってみると、簡単には価格が下がらないワケが見えてくる。

新築マンション価格の高止まりはまだまだ続く?

 不動産経済研究所によると、2022年の首都圏の新築分譲マンションの一戸あたり平均価格は6288万円で、前年比0.4%のアップだった。上昇率はわずかとはいえ、これで2年連続バブル期の最高値を更新した。

 6288万円のマンションがどれだけ高いのか。仮に自己資金288万円で、6000万円のローンを金利0.475%の変動金利型、35年元利均等・ボーナス返済なしで購入した場合の返済シミュレーションをしてみると、毎月の返済額は15万5089万円となる。家計の重荷になりすぎない返済負担率(年収に占める年間返済額の割合)を25%に抑えるとすれば、年収は744万円必要になる計算だ。

 変動金利型には金利上昇リスクがあるので、金利が上がっても適用金利が変わらず、返済額も変わらない全期間固定金利型のフラット35を利用するとどうなるか。2023年2月の自己資金比率が1割未満の金利は2.14%なので、毎月返済額は20万3095円に増え、返済負担率25%におさめるには、975万円の年収が必要になる。

 国税庁の民間給与実態調査によると、2021年の日本人の平均給与は年間443万円だから、平均的な会社員には簡単には手が届かない価格であることが分かるだろう。

 しかし、それでも実際に新築マンションは売れているのだ。不動産経済研究所の調査では、2022年の首都圏新築マンションの月間契約率の平均は70.4%だった。月間契約率というのは、発売月中に何パーセントが売れたかを示しているが、マンションが完成するまでにはかなりの期間を要するのが普通なので、月間契約率が70%を超えてくれば、高くても順調に売れていることを表しており、引き渡しまでに完売できる可能性も高いということだ。

 これは決して首都圏だけの傾向ではない。近畿圏でも月間契約率は72.7%で、首都圏よりむしろ高いくらいだ。

 マンション価格が高くなり過ぎると、買えない人が増えて、需給関係が緩み、そろそろ頭打ちになって下落してもいいのではないか? という気がするが、そんなことはない。まだまだ高い状態が続くというのが業界関係者の見方なのだ。