東京ではマンション価格が高騰し、手に入りにくい時代に(写真はイメージ)

(山下 和之:住宅ジャーナリスト)

 マンション価格が上がり続け、年収の何倍で新築マンションが手に入るかを意味する「新築マンション年収倍率」は、全国平均でも9倍近く、最も高い東京都では15倍近くに達している。平均的な会社員では、なかなか新築マンションを手に入れにくい時代だが、そのなかで何とか手に入れるにはどうすればいいのだろうか。

年収倍率が加速度的に高まっているワケ

 不動産データバンクの東京カンテイでは、新築マンションや中古マンションを、年収の何倍で取得できるかを意味する「年収倍率調査」を実施している。この年収倍率というのは、各都道府県で分譲された新築マンション価格(70m2換算)をその都道府県の平均年収で割って算出する。

 例えば70m2換算価格が5000万円で、その都道府県の平均年収が500万円なら、年収倍率は5000万円÷500万円=10 倍になる。年収500万円のまま、マンション価格が6000万円に上がると年収倍率は6000万円÷500万円で12倍になる。年収倍率の数値が小さいほど買いやすいことを意味し、数値が大きくなるほど買いにくくなるのは言うまでもない。

 東京カンテイでは、各都道府県別に年収倍率を出したうえで、全国平均も算出している。【グラフ1】にあるように2021年の新築マンションの全国平均は8.93倍と9倍近くに及び、なかでも最も価格の高い東京都は14.69倍に達している。


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 10年前の2011年には全国平均が6.27倍と2021年に比べて2ポイント以上低く、東京都は9.43倍で10倍を下回っていたので、あっと言う間に全国平均は7倍を超え、9倍近くまで上がってきたことになる。

 東京都では、2014年に10倍を超え、2017年には13倍台に乗せ、しばらく横ばいに近い状態が続いていたものの、2021年には14.69倍と15 倍に近い水準まで上がってしまったのだ。

 ここまで年収倍率が高くなっているのは、新築マンション価格が急速に上昇しているのが最大の要因だが、同時に、平均年収がなかなか上がらないために、相乗効果的に年収倍率が高まっているという事情がある。

【グラフ2】は不動産経済研究所が調査した全国平均の新築マンション価格の推移と、首都圏の価格推移を示している。全国平均の数値は、2012年の3824万円から2021年には5115万円になっているので、この間33.8%も上がったことになる。なかでも首都圏は4540万円から6260万円になり、なんと37.9%の上昇となっている。


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 それに対して、国民の収入はどうなっているのか。国税庁のデータをみると2012年には352.1万円だったのが、2021年は380.7万円で、上昇率は8.1%にとどまっている。マンション価格がすさまじい勢いで上がっているのに、収入は遅々として増えないのだから、年収倍率が加速度的に高まるのも仕方のないところだろう。