(山下 和之:住宅ジャーナリスト)
コロナ禍で実現しつつある「東京一極集中」の解消
新型コロナウイルスの影響で在宅ワークが広まったこともあり、東京から地方に移住する人が増えている。
総務省統計局の「住民基本台帳人口移動報告」によると、首都圏への人口転入超過数は縮小傾向にある。2021年は9万1699人の転入超過だったが、これは2020年に比べて1万7544人の減少だった。なかでも東京都は2021年5月以降8カ月連続の転出超過で、東京都特別区に限ると、2014年以降では初めての転出超過となった。
2020年から拡大した新型コロナの影響であるのはいうまでもない。テレワークの普及もあって、通勤やオフィスでの密を避けるため、都心から郊外へ、郊外から地方といった移住の波が強まっている。長年の課題であった「東京一極集中」の解消が、はからずもコロナ禍によって実現されつつあるわけだ。
そうした流れを受けて、東京圏からの移住者を獲得しようと、地方都市の多くが移住促進策に力を入れている。ここでは、茨城県日立市の例をみてみよう。
日立市はいうまでもなく、日立製作所の企業城下町として高度成長時代に急発展した。日立製作所だけではなく、関連企業も多く立地し、国内有数の工業都市になると同時に、久慈川河口付近には日立港があり、北関東における物流拠点を形成してきた。現在では、日立関連の主力工場の多くが三菱重工業に移管され、三菱重工業の企業城下町となっている。
だが、高度成長期を過ぎると製造業の海外進出などもあって人口の流出が続き、最盛期には20万人を超えていた人口が、現在では17万人台まで減り、減少の流れが止まらない。茨城県内では県庁所在地である水戸市に続く2位の人口規模を誇っていたものの、現在ではつくば市に抜かれて県内3位となっている。
その人口減少に歯止めをかけるべく、日立市が官民を挙げて実施しているのが移住促進策である。