鉄道線路上を走るレールマウンテンバイク(写真提供:嵯峨野観光鉄道、以下、記載ない写真は筆者撮影)

各地でさまざまな形で公開されている鉄道廃線トンネルを紹介する本連載。今回は「特別編」として現役の鉄道路線を紹介する。JR山陰本線の旧線で、京都の嵯峨野観光鉄道が運行する線路・施設を活用した新しい取り組みだ。

>>土木学会選奨土木遺産にも認定された明治期の貴重なトンネル、橋梁など(フォトギャラリー)

(花田 欣也:トンネルツーリズムプランナー、総務省地域力創造アドバイザー)

保線用の軌道自転車とレールマウンテンバイクに乗車

 嵯峨野観光鉄道は、トロッコ嵯峨~トロッコ亀岡間を結ぶ7.3kmの観光用の鉄道だ。もとは京都鉄道として1899(明治32)年に開通、その後、国有化により延伸され、京都から日本海沿いに下関まで通じる重要な幹線・山陰本線となった。

 平成に入り高速化のため新線に付け替えられた際に廃線となったこの区間で、1991(平成3)年、同社は元国鉄のディーゼル機関車牽引によるトロッコ列車の運行を開始した。沿線は保津川沿いの渓谷が続く風光明媚な区間で、春の桜や、秋の紅葉は京都のメジャーな観光スポットとして知られる。昨今ではインバウンドの利用者が伸び続けており、2024年(暦年)の利用者数は約107万人(前年対比109%)、そのうち訪日外国人旅行客がおよそ63%と、全体の約3分の2に迫る多さとなっている(同社調べ)。

春のシーズンは時期限定でライトアップされる桜が見事(写真提供:嵯峨野観光鉄道)

 コロナ禍を経て、京都の市内各地の観光スポットに人気が極度に集中し、いわゆるオーバーツーリズム現象が生じている。嵯峨野観光鉄道でも駅窓口では観光シーズンになると係員が日本語より英語を話す時間のほうが多くなるという。

 観光庁により外国人観光客の地方への分散を図るさまざまな施策が講じられるなか、先日、同鉄道で、観光庁「地域観光“新発見”事業」の一環として新たな取り組みがあった。それが「SAGANO RAILWAY ADVENTURE」だ。

 寒冷期で運休期間となる1、2月を活用し、社員が保線作業に使用する軌道自転車とレールマウンテンバイクでトロッコ亀岡~トロッコ嵐山間を往復する。