夜の「廃線ウォーク」も幻想的だ。碓氷峠のメロディックライトウォーク(写真提供:一般社団法人安中市観光機構、以下、特に表記のない写真については筆者撮影)

 利用者の減少に歯止めがかからず、全国各地で続く鉄道の廃線。とりわけ廃線となるのは中山間地を含む路線が多く、列車が行き交った多数のトンネルも使われなくなる。かつて日本が持つ技術を結集して開通させたトンネルを残し、地域の活性化に結びつける例も出てきた。その最前線を見ていこう。

 前回、碓氷峠「廃線ウォーク」について記した。今回は続編として、3月30日から新たにスタートした“夜の廃線ウォーク”「MELODIC LIGHT WALK」(以下、メロディックライトウォーク)について紹介する。

(花田 欣也:トンネルツーリズムプランナー、総務省地域力創造アドバイザー)

【連載初回から読む】
年間1800人が訪れる廃線ウォーク、「峠の釜めし」で知られた旧信越本線・碓氷峠にはなぜ今も人が集まるのか

「スポーツ文化ツーリズムアワード2023」を受賞

 一般社団法人安中市観光機構の企画・運営による碓氷峠の「廃線ウォーク」は、各地で行われている鉄道廃線ウォークの草分け的存在だ。横川~軽井沢間11.2km(JR運行時の営業キロ数より)のうち、主に横川寄りにある日帰り温浴施設「峠の湯」から軽井沢駅までの間、上り線または下り線を踏破する。5月の大型連休中には、私も特別講師として現地をガイドした。

煉瓦と新緑のコントラストが鮮やかだ

 その間に歩き抜くトンネル数は、1997年に廃止された新線および明治時代に開通した旧線「アプトの道」も合わせると計39本にのぼり、他に橋梁も数多い。国重要文化財にも指定されているこのエリアは、トンネルとトンネルの短い間に広がる新緑が輝きに満ち、周囲は手つかずの大自然が広がっている。立入禁止区域であるためほかに人気(ひとけ)は全くない。

 2018年10月の開始以来、コロナ禍の時期を挟みながらも新規の参加者のみならずリピーターが増え、2023年度は、週末や祝日主体の年間計75回開催で延べ1800人の参加者を集めている。今年2月にはスポーツ庁、文化庁、観光庁による「スポーツ文化ツーリズムアワード2023」で、「文化ツーリズム賞」を受賞した。

プロジェクションマッピングが引き出す「夜の碓氷峠」の魅力

 今回紹介するのは、碓氷峠「廃線ウォーク」の新たな展開となる「メロディックライトウォーク」。峠の鉄道の歴史にちなんだオリジナルストーリーをプロジェクションマッピングや照明、音響など最新機器を活用して体験できる没入型コンテンツだ。「夜の廃線を歩く」という非日常的な体験を通じて、碓氷峠の鉄道の歴史を学ぶこともできる。

多数配置された照明機器が幻想的な世界を演出する