数は少ないが、山岳トンネル内に設置された駅(ここでは「トンネル駅」と呼ぶ、地下鉄駅は除く)がある。利用者には不便だし、建設コストもかかるのになぜだろうか。行ってみるとなかなかおもしろい体験ができるトンネル駅を紹介しよう。
(牧村あきこ:土木フォトライター)
JR東日本上越線の土合(どあい、群馬県みなかみ町)は、おそらく最も有名な「トンネル駅」だろう。駅舎と上りホームは地上にあるが、下りホームは約70m下の新清水トンネル内にある。下りホームから改札口までは、486段もの階段をのぼらなければならない。
この深さのために「日本一のモグラ駅」と呼ばれ、ちょっとした観光スポットになっているのだ。
土合駅がなぜこのような構造になっているのか。それは、上越線の下り線と上り線が別々のトンネル(それぞれ「新清水トンネル」と「清水トンネル」)を通っているからだ。なぜそうなったのかを知るには上越線がたどった苦闘の歴史を振り返らなければならない。
それを説明する前に、まずは下りホームから改札口までのトンネル駅探検を実感してもらおう。
列車を降り、階段を上る
下り列車が土合に到着した。改札口に向かう階段は、黄矢印の先にある。