(牧村あきこ:土木フォトライター)
冒頭の写真は、JR飯山線信濃平駅(しなのたいら、長野県飯山市)の駅舎なのだが、なにか別のものに見えないだろうか?
そう、貨車(貨物を運ぶ鉄道車両)だ。昭和の時代には、いくつもの貨車が連結された長い貨物列車がよく走っていたが、最近はほとんど見かけなくなった。姿を消した貨車のいくつかは、こうして駅舎として利用されているのだ。
このように貨車を改造した駅舎を「ダルマ駅」と呼ぶことがある。貨車から車輪や連結器などを取り外し車体だけになった様子が、手足のない置物のだるまに似ているからだ。
この、情緒あふれるダルマ駅だが、残念なことに姿を消していっている。消えゆくダルマ駅の現状と今後を前後編でお伝えする。
元はどういう種類の貨車だったのか?
ダルマ駅を味わうポイントのひとつはベースとなる貨車の種類だ。駅舎には屋根が必要なので、利用するのは有蓋(ゆうがい)車(記号:ワ)、冷蔵車(記号:レ)、車掌車(記号:ヨ)、などに限られる。
有蓋車や冷蔵車は、車体の中央付近に荷物搬入用扉(引き戸)があるので、扉を外したあとは開口部になっている。
一方車掌車の場合は、車体の端にデッキがあり、人(車掌)はそこから出入りする。車体中央の扉はない代わりに、窓があるのが特徴だ。
以下ではいくつかのダルマ駅の写真を紹介するが、ベースとした貨車の種類がなんだったのか、という点にも注目してほしい。
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外観と内部で貨車の面影を味わう
信濃平駅は、半分が車掌室、半分が貨物室という混合タイプの貨車だ(記号:ワフ)。
開口部の枠には、リベット(2つの鋼材などを留める部品)があった穴が開いていた。