推し活のイメージ(写真:bogubogu/Shutterstock.com)

「初任給30万円時代」などと若者をとりまく景気のいい話が聞かれる一方、今後の国内消費の牽引役として期待されているZ世代の多くが「推し活」に没頭しているという。アイドルやスポーツ選手など、自分とは別世界の人物を応援するために惜しみなくお金を投じるのはなぜか。若者社会の研究を続けている中央大学・山田昌弘教授に聞いた。

(湯浅大輝:フリージャーナリスト)

人手不足で若者は売り手市場、という幻想

──このところ、初任給の大幅アップなど若者、特にZ世代が豊かになりつつあるといった話が聞かれます。その中でも、特に彼らがお金を注いでいるのが、「推し活消費」です。このトレンドは今後も続くのでしょうか。

山田昌弘氏(以下、敬称略):間違いなく続くでしょう。ただし、私は「Z世代が豊かになっているから推し活マーケットも拡大していく」という論理は成り立たないと考えています。

──どういうことですか?

山田:というのも、Z世代で豊かになっているのはごく一部の層に限られます。初任給30万円以上を出す企業も確かにありますが全体から見ればごく一部。ニュースで話題になったとしても、Z世代の実態としては同世代における収入格差がさらに拡大している証とも言えるでしょう。

 大卒で大手企業に入社できるような若者は全体から見れば少数。むしろ、中小企業に就職しているZ世代のほうが大部分で、非正規雇用の人も少なくないでしょう。人手不足で働く場所はあって、多少時給はアップしても、大企業社員のような賃上げの恩恵に十分にあずかっているとは言えません。

 そうした状況の中、推し活は現実世界に希望を持っているZ世代も、そうではないZ世代も一様に「ハマっている」という意味で、成長市場になっているのです。

──なぜ推し活はここまで広がっているのでしょうか。