リアル物販では、ガチャと同様のランダム商法も広がっている(写真:moonmoon/イメージマート)リアル物販では、ガチャと同様のランダム商法も広がっている(写真:moonmoon/イメージマート)

(矢守亜夕美:株式会社オウルズコンサルティンググループ プリンシパル)

 前回の記事「可処分所得の4割を吸い尽くす推し活ブーム、その裏で増える推し活依存の深刻度」では、「推し活」ブームが加速する中、国内で顕在化しつつある「推し活依存」のリスクを取り上げた。推し活関連の事業を行う企業は、リスクの予防に取り組んでいく必要がある。

 直近ではホストクラブの悪質商法が国会で問題視され、今春から新宿・歌舞伎町のホストクラブで「売掛金(ツケ払い)」が禁止されたが、あくまでホストクラブに閉じた議論に留まっている。より広範な「推し活」業界でも、依存や浪費を防ぐための対策が議論されるべきだ。

 今回は、健全で倫理的な推し活の実現に向けて、企業が取り組むべきことを検討したい。

「ギャンブル/ゲーム依存」の次は「推し活依存」?

 依存症対策で大きく先行するのがギャンブル業界とゲーム業界だ。日本での依存症対策は、古くは薬物・アルコールといった「物質への依存」から、ギャンブル依存、そしてゲーム依存という「行動への依存(行動嗜癖)」へと対象を広げてきた。

 特にゲームに関しては、2019年5月にWHO(世界保健機関)がゲームのやり過ぎで日常生活が困難になる「ゲーム障害」を国際疾病に認定し、注目を集めた。依存症支援の現場でも「ギャンブル依存からゲーム依存へ」と謳われ、ゲーム企業各社もギャンブル業界の取り組みを参考に対策を強化してきた流れがある。

 一例としてセガサミーホールディングスは、自社が取り組む重要課題(マテリアリティ)の一つに「依存症や障害を防ぐ」を掲げ、取り組みを進めている。ゲーム、遊技機(パチンコ・パチスロ)、カジノ事業などを行う企業として、依存症予防に取り組むことを重要な社会的責務と考えているゆえだ。

「推し活依存」をギャンブル・ゲーム依存に次ぐ新たな行動嗜癖と捉えるならば、まずはこうした両業界の取り組みに学ぶべきだろう。