メキシコの祝祭「死者の日」の追悼行列。死者の日はメキシコにとってとても重要な日だ(写真:ロイター/アフロ)メキシコの祝祭「死者の日」の追悼行列。死者の日はメキシコにとってとても重要な日だ(写真:ロイター/アフロ)

 人気ロックバンド「Mrs. GREEN APPLE(ミセス・グリーン・アップル)」が公開した新曲「コロンブス」のミュージックビデオ(MV)に、人種差別的な描写が含まれていたとして炎上したのは記憶に新しい。様々なコンテンツを直接海外に発信できる今の時代、クリエイターや企業が気をつけるべきことは何なのか。ビジネスにおける人権や倫理の問題に詳しいオウルズコンサルティンググループが分析する。

(矢守 亜夕美: 株式会社オウルズコンサルティンググループ プリンシパル)

人気バンドのMVが「差別的」とされ公開停止

 6月12日、人気バンド、Mrs. GREEN APPLEの新曲「コロンブス」のMVに「歴史や文化的な背景への理解に欠ける表現が含まれていた」として、動画の公開が停止されたという出来事があった。

 公開停止となったMVは、それぞれコロンブス、ナポレオン、ベートーヴェンに扮したバンドのメンバー3人が南の島を訪れ、そこに住む類人猿とホームパーティを楽しむというストーリーであった。

 MV自体は楽しげな雰囲気のものだったが、コロンブス一行が南の島を“発見”したり、類人猿に楽器の弾き方や騎乗技術などを“教育”したり、類人猿が引く人力車にメンバーが乗ったりと、植民地主義や奴隷制を想起させるような内容であったため、「植民地主義を肯定している」「人種差別をエンタメ化している」といった批判の声が次々に上がった。

 最終的にMVは公開停止となり、構想の提案や意匠の監修を務めたボーカルの大森元貴氏は謝罪文を発表することとなった。Mrs. GREEN APPLEが所属するユニバーサルミュージックも、併せて謝罪文を出している。

 Mrs. GREEN APPLEは国内有数の人気バンドで、「グローバルでも活躍できる」と期待されてきた実力派であるだけに、音楽界にとっても残念な出来事だったと言えるだろう。

 このMVの問題点については、“炎上”後に各所で論じられているので深くは立ち入らないが、日本のエンタメ業界において、今回のようなトラブルは初めてではない。コンテンツを海外にも積極的に発信していくことが求められている昨今、同様の問題を防ぐためにはどうすればいいのだろうか。

 まず前提として認識しておきたいのは、国内のエンタメ業界において、今回のような「表現における人権リスク」を巡るトラブルはしばしば起きているということだ。