K-POP大手も人権リスクのチェックに注力

 こうした取り組みは、K-POPを世界に輸出している韓国でも一部先行している。

 BLACKPINKなど著名なK-POPアーティストが所属するYGエンターテインメントは、従来のサステナブルレポートに加えて、「SUSTAINABLE CONCERT REPORT」(持続可能なコンサートに関するレポート)を公表している。

 レポートによれば、同社は独自のコンテンツ管理フレームワークを設け、歌詞・振り付け・舞台挨拶などのアーティストのパフォーマンスや、画像・映像・衣装・舞台装置などについて「多様性を尊重し、現在の社会的背景について思慮深く反映されているか」を確認している。

 具体的な取り組みの例としては、チェックリストを設け、「コンサートの中に明示的または暗示的な差別的内容が含まれていないか」などを常に確認しているという。

 もちろん、K-POPの世界も完璧というわけでは決してない。

 例えば、K-POPの軸をなすHIPHOPやストリートダンスはブラックカルチャーに起源を持つため、ブラックカルチャーに対する敬意を欠いた表現がしばしば批判の的になっており、人権や文化の尊重に関してはまだ道半ばだとの指摘も多い。

 それでも、先の「SUSTAINABLE CONCERT REPORT」のように、業界が抱える課題を課題として認識し、対処しようという姿勢があるのは確かだ。

 一方で、日本のエンタメ業界では、そういった取り組みはまだ充分に進んでいない。今回のMrs. GREEN APPLEのMVや楽曲を巡るトラブルにしても、関わったレーベルや広告代理店などの中で人権や倫理、文化の観点から専門家がチェックを徹底する体制があれば、制作段階で軌道修正が図られていたのではないか。