ChatGPTのリリースから早2年、生成AIは私たちの仕事や生活に深く浸透している。だが、生成AIの導入を進めている企業の中には、期待ほどの成果が得られていないという声も上がる。生成AIが期待通りの成果を出すにはどうすればいいのか。生成AIを使いこなせる企業と使いこなせない企業を分けるものは何か──。最新研究を紐解く。(小林 啓倫:経営コンサルタント)
生成AIは期待外れ?
2022年11月30日に生成AI「ChatGPT」がリリースされてから、丸2年が経とうとしている。ChatGPTは登場からおよそ2カ月でアクティブユーザー数が1億人を突破したとされており、この普及の速さは、TikTokやFacebookといった他の著名サービスを上回っている。それだけ生成AIが、多くの人々から革新的な技術だとみなされた証と言えるだろう。
その流れは企業にも波及し、いまや多くの大手企業だけでなく、中小企業まで生成AIの採用を始めている。まさに生成AIブームと言える状況だが、その効果は思ったよりも実感されていないようだ。
たとえば、コンサルティング会社のデロイトが、生成AI導入済みの企業にアンケート調査を行い、今年4月にその結果を発表している。
それによると、さまざまな企業において効率性・生産性向上を目的とした生成AI導入が進んでいるものの、彼らの多くが「ある程度は求めているメリットを達成できたと報告しているが、まだ大きくは達成していない」と回答。生成AIの導入を拡大するという課題についても、回答者のおよそ10人に4人が、「生成AI関連人材に関する懸念に対処する準備が、組織内でわずかしかできていない、あるいはまったくできていない」と回答している。
また、同じコンサルティング会社のベイン・アンド・カンパニーが今年6月に発表した調査結果によれば、「企業が生成AIに取り組むにつれ、期待と比較してパフォーマンスがわずかに低下している」と報告されており、「営業と営業事務、コード開発、マーケティング、顧客サービス、顧客オンボーディング」という5つの分野で成功の兆しが見られるものの、「法務、事務、人事のユースケースはあまり成功していない」という結論が下されている。
さらに、ニュースサイトBusiness Insiderが10月に発表した記事によれば、米国の広告業界では、生成AIに対する当初の熱意が懐疑論に変わってきたという。AIはデータ分析などのタスクに役立つもの、その進歩は革新的というよりは漸進的なものとみなされており、導入には慎重な姿勢が見られるようになってきたそうだ。
もちろん過剰な期待と、その反動としての失望はあらゆる先端技術に見られるものであり、生成AIも同じコースを進んでいると言える。失望の声が聞かれるようになってきたというのは、それだけ導入と実際の活用が進んでいるということでもある。
それでは、生成AIの導入が期待通りの成果を上げるケースとそうでないケース、2つを分けるものとは何なのだろうか。