生成AIが未来の自分と向き合う手助けになる?生成AIが未来の自分と向き合う手助けになる?

 米MITが60歳になった自分をAIで生成し、会話できるアプリを開発した。果たして、未来の自分と会話することにどのような意味があるのだろうか。最新研究を紹介する。(小林 啓倫:経営コンサルタント)

「老いへの恐怖」は、多かれ少なかれ、誰もが心に抱いている感情ではないだろうか。その証拠に、昔からこの不安をテーマにした芸術作品が数多く生み出されている。

 オスカー・ワイルドが1890年に発表した小説『ドリアン・グレイの肖像』は、主人公の美男子ドリアン・グレイが、自分の代わりに歳を取る肖像画を手に入れ、やがて悲劇的な結末を迎えるというストーリーだ。

 また、2021年のホラー映画「レリック 遺物」は、年老いた母をめぐるストーリーである一方で、老いや介護といった問題に対する心理描写が盛り込まれている。老いが生理現象である以上、誰もこの問題から目を背けることはできない。

 ただ、老いを回避することはできないが、老いへの恐怖を緩和することはできる。これまでもさまざまな方法が考えられてきたが、米MIT(マサチューセッツ工科大学)の研究者らが、興味深い方法を発表している。そのカギとなるのが、お馴染み生成AIだ。

未来の自分を生成してくれる「Future You」

 論文を発表したMITの研究者らは、研究成果を「Future You」というツールにして、現在ウェブ上で試験的に公開している。

 これは簡単な質問(MBTIのような心理テスト+個人的な情報に関する質問)に答えて自分の写真をアップロードするだけで、60歳になったときの「未来の自分」が生成されるというもの。ChatGPTのようにLLM(大規模言語モデル、対話型AIを動かすエンジン部分に当たる技術)を使用しているので、まさにChatGPTのように、チャット形式で生成された自分と会話することができる。

MITの研究者らが開設した「Future You」MITの研究者らが開設した「Future You」

 筆者も試してみたのだが、あくまで試験的に公開されているサイトのためか、残念ながら途中でストップしてしまった。そこで、MITが公開している公式の紹介動画を次ページに掲載しておこう。