莫大な費用がかかる米大統領選を戦い抜くうえでカギを握る小口献金。寄付文化が根付いている米国だけに、寄付を促すテクニックに関する研究も進んでいる。今回、紹介するのは、寄付金をアップするための感情分析。喜怒哀楽のどの部分が寄付金増につながるかという研究である。(小林 啓倫:経営コンサルタント)
米国の大統領選が目前に迫っている。8月の民主党大会で同党の大統領候補指名を受けた、現副大統領のハリス氏は依然としてその勢いを保っており、一部の報道によれば、同氏が8月の1カ月間で調達した資金の額は、ライバルであるトランプ候補の3倍にも達したそうだ。
米国の大統領選は非常にカネのかかるイベントだ。ある調査によると、2020年の大統領選で両陣営が支出した額の合計は、57億ドル(約8200億円)にも達したそうである。
この途方もない費用をまかなうために重要になるのが、市民からの小口献金だ。
たとえば同じ調査によれば、トランプ氏は2020年の選挙キャンペーンにおいて7億7400万ドル(約1100億円)を集めたのだが、その半分以上を200ドル以下の小口献金者から得ていたそうである。
欧米には寄付文化が根付いていると言われるが、これだけでもいかに「個人から寄付を集めるか」が重要であることが分かるだろう。それだけに、寄付を促すテクニックに関する研究も進んでおり、そこには生成AIも活用されるようになっている。
寄付金アップのために訴えるべき感情とは?
最近、ニュージーランドにあるオークランド大学の研究者らが、興味深い論文を発表している。テーマは「感情分析を利用して、寄付がどの程度集まるかを予測する」というものだ。
彼らは生成AIを利用してソーシャルメディア上に投稿されているテキストを分析し、そこから把握された感情と、実在の団体に対する寄付金の額がどのように連動しているかを調査した。
感情分析自体は、生成AI時代になって初めて登場したものではない。特にソーシャルメディア分析との関係で言うと、膨大な投稿データの中から特定のトピックに関して書かれたものを抽出して、その中で支配的な感情を把握するという取り組みが以前から行われている。
たとえば、それを通じて、企業が新商品に対する消費者の反応を把握したりするわけだ。
今回の研究はそこから一歩進んで、生成AIを使った、より細かい感情分析を試みている。どのような分析を行ったのか、簡単にまとめておこう。