喜びや悲しみなど具体的な感情を識別できるAI

 研究者らは今回、「TTL(Transformer-Transfer Learning)モデル」という分析手法を実施した。これはLLM(大規模言語モデル、生成AIを動かす頭脳となる技術)を利用して、従来よりも細かく感情を把握可能にしたものだ。「喜び」「悲しみ」「怒り」「驚き」「恐れ」「嫌悪」といった具体的な感情を識別できるようになっている。

 私たちが一般的に使っている生成AIサービスでも、ある程度まで感情を把握させることができる。

 たとえばいま、ChatGPTに「この味で売れると思っているなら、大したものだ」というテキストを入力し、そこからどのような感情が読み取れるか尋ねたところ、「この文章には皮肉や批判的な感情が込められているようです」と正しく把握できていた。

 研究者らはこの分析精度をさらに高めるために、事前にLLMに対して特別なチューニングを行い、感情分析に特化したAIを用意した。また単純に「この人は怒っていそうか、それとも喜んでいそうか」といった答えを出すのではなく、ある投稿に対して、「この文章は60%の喜び、20%の驚き、20%のその他の感情を含んでいる」というように細かく分析することを可能にしたそうだ。

 彼らは用意したAIを使い、実際にX(旧Twitter)に投稿されたポスト(旧ツイート)を分析して、そこに込められた感情を把握。その結果と、研究対象とした非営利団体(オーストラリアとニュージーランドで活動するフレッド・ホローズ財団と、ニュージーランドのオークランド大学の2団体)への寄付金額が関連しているかどうかを検証した。

 そして実際に、ソーシャルメディア上の感情と実際の寄付金額が連動していることが確認されたのだが、果たして人々に献金を促したのは、どのような感情だったのだろうか。