生成AIが寄付金アップに欠かせない武器に?

 確かに「怒り」や「悲しみ」といった感情が、寄付金額の増加と結びついているケースも確認されたが、それは長期的には続かなかったり、またユーザーが表明することで逆にマイナスの効果となるネガティブ感情も確認された。

 誰がいつ、具体的にどのような感情を発露するかによって、一般の人々に与える影響が変わるとなれば、それに合わせて訴える感情を調整しなければならない。

 そのために武器になるのが、当然ながら今回の分析にも使用された生成AIだろう。正確に言えば、それは私たちが知るChatGPTのようなチャットボットではないが、その土台となっているLLMという技術に手を加えたものであり、企業のマーケティング活動にも十分に導入が可能だ。

 また今後、特定の言語を理解する能力を高めたり、あるいは特定の業界やテーマ、トピックに関する専門用語を教えたりするなどして、感情分析用生成AIの性能がさらにアップすることも考えられる。

 あるいはいずれ、生成AIがソーシャルメディア上の感情をリアルタイムで分析し、短期的・長期的影響の観点から、「いま訴えるべき感情」を自動で盛り込んだ文章を投稿してくれるようになるかもしれない。

 AIが人間の感情を的確に把握し、操作するような世界はなんだか気味が悪いかもしれないが、そんな世界が到来するまであと一歩の時代が来ているわけである。

【小林 啓倫】
経営コンサルタント。1973年東京都生まれ。獨協大学卒、筑波大学大学院修士課程修了。
システムエンジニアとしてキャリアを積んだ後、米バブソン大学にてMBAを取得。その後コンサルティングファーム、国内ベンチャー企業、大手メーカー等で先端テクノロジーを活用した事業開発に取り組む。著書に『FinTechが変える! 金融×テクノロジーが生み出す新たなビジネス』『ドローン・ビジネスの衝撃』『IoTビジネスモデル革命』(朝日新聞出版)、訳書に『ソーシャル物理学』(草思社)、『データ・アナリティクス3.0』(日経BP)、『情報セキュリティの敗北史』(白揚社)など多数。先端テクノロジーのビジネス活用に関するセミナーも多数手がける。
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