石破新総裁の経済政策をマーケットは警戒している(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

9月27日、自民党の新総裁に石破茂氏が選出されました。30日の日経平均株価は終値で前週末1910円安と大幅に下落するなど、株式市場では財政再建を重視する石破氏を警戒する動きも見られています。今後米国でも大統領選挙といった経済や金融市場に与えるビッグイベントが続くなか、第一生命経済研究所の藤代宏一主席エコノミストは「石破政権の誕生は、日銀の利上げを抑制する要因になるかもしれない」と話します。今後の日本経済や金融市場をどう見るか、藤代氏に聞きました。

(河端 里咲:フリーランス記者)

「高市トレード」が巻き戻し、経済政策は岸田路線を継承か

──自民党の総裁選で石破氏が選ばれました。それを受けて、日経平均先物は急落、円高・ドル安の進行などの反応が見られていますが、石破新総裁による金融市場への影響をどう見ますか。

藤代宏一・第一生命経済研究所主席エコノミスト:金融市場参加者が抱く石破さんの印象は財政再建重視のため、27日の15時まで続いた、金融緩和・財政出動策を想定した「高市トレード」が巻き戻されるのは当然と言えば当然です。

 もっとも、増税や歳出削減など財政再建を直ちに実行できるかと言えば、それは疑問です。実際、石破氏自身が総裁選期間中に具体的な策に言及していないので、結局は岸田政権と同様、インフレと景気拡大の中で、税収を伸ばす政策態度になるのではないかとも見ています。

藤代 宏一(ふじしろ・こういち) 第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト。2005年に第一生命保険入社、2008年 みずほ証券出向。2010年 第一生命経済研究所出向を経て、内閣府経済財政分析担当へ出向。2年間経済財政白書の執筆、月例経済報告の作成に従事。2023年4月より現職、金融市場全般を担当
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 総裁決定後27日のニューヨーク外国為替市場で円相場は一時1ドル=142円10銭程度まで上昇しました。為替に従属する昨今の日銀の金融政策を考えると、ある程度円高が進んだことで、いったん為替を気にすることなく、じっくりと日本経済の動向を見極めることができるとも言えます。輸入物価が落ち着けば、緩和的な金融政策が長く続くと見ています。

 逆説的に言うと、高市氏のように日銀に(利上げをしないよう)圧力をかけるタイプの政権になり円安が進行すると、日銀はむしろ緩和的な金融政策を維持できなくなります。そのため、石破政権の誕生は、日銀の利上げを抑制する要因になるかもしれません。

──日銀の9月の政策決定会合では、短期金利(無担保コール翌日物金利)を0.25%で据え置きましたが、今後の日銀の政策金利の動向をどう見ていますか。