自民党総裁選での石破茂氏の勝利を受けて、韓国では微妙な安堵感が漂っている。だが、それは「高市早苗氏よりはマシ」という程度で、むしろ石破氏が掲げる「アジア版NATO」構想が反日に燃料を投下する懸念がある。歴史認識問題への対応を含め、石破氏は難しい舵取りを迫られる。
(平井 敏晴:韓国・漢陽女子大学助教授)
自民党総裁選挙の結果を受け、韓国では微妙な安堵感が漂っている。新総裁に選ばれたのが、歴史認識問題に対して日本の反省と日韓両国の協力が重要だと強調するハト派の石破茂氏だったからだ。
総裁選挙そのものへの関心は実に高かった。1回目の投票で1位の高市早苗氏と2位の石破氏による決選投票が決まったときも、次の投票までのわずかな合間に、3大紙である朝鮮日報、中央日報、東亜日報が相次いでネット記事を発信したほどである。
その要因は、派閥の裏金問題が批判され、ある意味、党の存続がかかったトップ選出であり、9人の候補者が乱立するという状況であったのは言うまでもない。だがそれよりも、高市氏が当初から有力視され、決選投票まで残ったためである。
総裁選を控えた高市氏をめぐる韓国での報道を振り返ると、「靖国神社参拝を公言」する「極右」で、「安倍晋三元首相の女性版」という言葉が目立つ。そもそも日本国内でも「保守色が付きすぎる」との指摘があるほどだ。そのため、もしも高市氏が新総裁になった場合には、中国や韓国との関係悪化はもちろん、そうした事態に陥ればアメリカを怒らせることにもなるのではとの指摘もあった。
岸田政権で日韓関係は改善したが、高市氏が選ばれれば一気に暗雲が立ち込めるといわんばかりの雰囲気だった。総裁選当日の朝には、「高市氏当選の場合は韓日関係への悪影響が憂慮」など、警戒感を露骨に吐露する記事が数多く掲載された。とりわけ印象的なのが、世界日報からの記事で、「日本のキングメーカー麻生氏、高市氏を支持。極右総理誕生となるか」という見出しが躍った。韓国としては「高市総裁」への警戒感が最高潮に達していたのである*1。
*1:‘日 킹메이커’ 아소 “다카이치 지지”… 극우총리 탄생하나(segye.com)
だが、最終的に石破氏が新総裁に選ばれたことで、韓国はとりあえず安堵しているようだ。韓国日報は、石破氏がかつてのインタビューで日韓関係について言及した動画をネット上に公開している。
そのなかで石破氏は、「私たちが朝鮮半島の歴史をどれだけ知っているかということについて、私自身は強い反省をもっている」と述べている。そのうえで、「国際法的に合法であったと認識しているとはいえ、日本が韓国を併合したのはどういうことであったのかということを我々(日本人は)よく考えていく必要がある。そして韓国との真の信頼関係を築きたい」と発言している*2。
*2:3년 전 발언에 나타난 이시바 시게루 차기 일본 총리의 과거사 인식 수준 | 코라시아포럼 21 (naver.com)
これまでも日本で報じられているように、今回の自民党総裁選挙の結果について韓国では概ね好感をもって報じられているのは確かである。だがそれは、「高市氏よりはずいぶんマシ」ということに過ぎない。