韓国が懸念する「アジア版NATO」構想

 総裁選直後の午後3時50分ごろに配信された韓国ファイナンシャルニュースの記事では、新総裁を「安保通」と紹介し、日本の「軍事力強化と安保体制構築に大きな役割を果たしてきた」と評価した。そして「自衛隊の国軍化」と「集団的自衛権の行使」については、石破氏が保守政治家であることを色濃く表していると、懸念も示している。さらに革新系のハンギョレ新聞に至っては、石破氏が“日本の責任”に言及してはいるものの、本質は“保守政治家”だと一刀両断する*3、4

*3日 새 총리 이시바 시게루, 그는 누구 (naver.com)
*4‘전향적 역사관’ 이시바 집권해도 한-일 관계 ‘큰 틀’ 바뀌지 않을 듯 (hani.co.kr)

 韓国が石破氏を特に恐れているのは、石破氏がいわゆる「アジア版NATO」の構想を打ち出している点だ。近年、核開発などで軍事的関係を深めている中国、北朝鮮、ロシアに対峙するために、周辺の民主主義国家が連帯して集団防衛をしていこうとするもので、アメリカからの「核の共有や持ち込み」も視野に入れている。

 これについては日米地位協定の見直しや憲法改正も必要になるため、日本国内でも相当な議論が必要だが、韓国では別の意味でハードルが高い。なぜなら、加盟国での有事の際には、ほかの加盟国が集団的自衛権を行使して防衛に当たることになるからだ。つまり、朝鮮半島で有事が起きれば、日本の軍事力が韓国の領土に投入される。

 それを果たして韓国社会が許容するだろうか。実行支配する竹島(韓国名、独島)を日本からの国土防衛の象徴とし、日本からの軍事力の投入を絶対に許さないと声をあげ、「独島はわが領土」という歌まで作って口ずさんできたのだ。つまり、アジア版NATO構想は、親中、親北傾向のある韓国のリベラル層からの反発はもちろんだが、独島イデオロギーを揺るがしかねず、それゆえに韓国の保守層からも強い拒絶反応が予想される。

 そんな事態になれば、高市氏が総裁として靖国神社参拝を実行するよりもはるかに、日韓関係を崩壊させる破壊力を持つだろう。なんとも危険な香りが漂ってくる。

 また、歴史認識問題についても、石破政権が韓国に対して前向きな対応がどこまでできるのかは未知数だ。