石破氏は歴史認識問題にどう対応?

 仮に石破氏が韓国に歩み寄り、理解を得られたとしても、問題は山積みだ。たとえば、世界各地に設置されている慰安婦像はどうなるのだろうか。

 つい先日もドイツのベルリン市ミッテ区にある慰安婦像の撤去が決まったばかりだ。それに至るまでには日本政府からベルリン市への説得が続けられていたが、韓国に歩み寄ればそのようなことができなくなる可能性がある。

撤去された独ベルリンの慰安婦像(写真:ddp/アフロ)

 私のように韓国に在住していると感覚がマヒしているのか、慰安婦像(韓国では「平和の少女像」)をソウル市内で目にしても、「あ、こんなところにもあるんだ」という程度にしか思わない。だが、日本から観光などで来た人からすると、決して心地よくはない。若者の街である弘益大学前での設置が検討されたとき、そうした理由で大学側が固辞したこともあった*5

*5'홍대 앞 소녀상' 건립 충돌…학교 반발에 제막식 취소 (naver.com)

 特に韓国の野党は慰安婦像設置において、これまでのように今後も積極的であり続けるに違いない。2年半後に控えた大統領選挙で政権交代が起きれば、その時は日本に対して強硬な姿勢を取り続けている李在明(イ・ジェミョン)氏が大統領の座に就いている可能性が高い。そうなると、歴史認識問題をめぐる石破氏の対応如何では、日本は相当なコリアリスクを背負うことになるだろう。

 これから石破新総裁が韓国に対してどのような対応をとり、政策を進めていくのか、先が見通せない。だが、これまでの発言を振り返れば、茨の道を歩むことになるのは、ほぼ確実だろう。

平井 敏晴(ひらい・としはる)
1969年、栃木県足利市生まれ。金沢大学理学部卒業後、東京都立大学大学院でドイツ文学を研究し、韓国に渡る。専門は、日韓を中心とする東アジアの文化精神史。漢陽女子大学助教授。