米国から見た日本の新首相:石破理論には賛同しつつアジア版NATOは時期尚早
ほぼハリの様相を強める米国、岸田・バイデン体制の継続は既定路線に
2024.10.1(火)
高濱 賛
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日米同盟を最高水準にした岸田路線継承
「もしハリ」(もしかしたらハリス)から「まずハリ」(ほぼハリスに決まりそう)で、米大統領選はいよいよ最終局面に入ってきた。
(もっとも選挙ばかりは当日まで分からない。支持率など信用できない)
米国では、よほどのことがない限り、カマラ・ハリス副大統領が傷だらけのドナルド・トランプ元大統領を抑えて逃げ切りそうな雰囲気にはなっている。
日米とも新しい首脳が誕生するが、日本は10月1日、一足お先に石破茂氏が首相に就任する。
日米同盟を最重視する米大統領は、就任後会談する外国首脳として石破氏をワシントンに招く可能性大、といった声すらワシントン外交筋の間では囁かれている。
石破氏は総裁選中、中国やロシアによる軍事活動の活発化や北朝鮮の相次ぐ弾道ミサイル発射など日本周辺の安全保障環境が厳しさを増す中で、総裁選では「アジア版NATO(北大西洋条約機構)」の創設や日米地位協定の改定など独自の安保政策を打ち上げている。
「安全保障の仕事を長く手がけてきた。日本の守りをきちんと確立していく」
石破が9月27日、自民党総裁就任後初の記者会見で強調した「アジア版NATOの創設」は同氏の持論である。
NATOは米国や欧州各国などによる軍事同盟で、加盟国に対する攻撃を全加盟国に対する攻撃とみなし、集団的自衛権を行使することを規定している。
石破氏は、ウクライナがロシアの侵略を許したのは「NATOに加盟していなかったからだ」として、アジアにおける集団安全保障体制の構築を訴える。
ただ、日本は集団的自衛権の従来からの政府解釈(内閣法制局)では全面的な行使を違憲としてきた。石破氏が唱える構想がNATOに倣うのであれば、その変更が必要になる。
石破氏は日米同盟強化の一環として、米国に自衛隊の訓練基地を作る案*1や在日米軍の法的地位を定めた日米地位協定の見直し*2も掲げている。
*1=現在、自衛隊の長射程ミサイルの発射訓練は広さの制約がある国内ではなく、主に米国で実施されている。石破氏は、米国内に常設拠点を設けることで効果的な訓練を円滑に実施したいという狙いがある。
*2=地位協定改定は多くの在日米軍基地を抱え、米兵による犯罪が日常茶飯事化している沖縄県も要望してきた。だが、米側は見直しに否定的だ。これはむしろ外務・防衛当局による根回しから始めるべき案件といえる。
石破氏が新大統領にどういった形で「アジア版NATO」構想を提起するのか。
総裁選での公約である以上、言い放っただけでは済まされない。自民党員、そして国民がしっかりと聞いているからだ。