アジア版NATOは短兵急すぎる

 さらに、ブリンケン氏の右腕として対中、対日関係を担当してきたダニエル・クリテンブリンク国務次官補(東アジア・太平洋担当)は9月17日、ワシントンのシンクタンク、スティムソンセンターで以下のような講演をしていた。

「バイデン政権のインド太平洋戦略の成果は、同盟・友好国同士が結び付きを深めて協力関係を高める『格子細工』(Latticework)のネットワーク構築を進めてきたことだ」

「インド太平洋地域の安全保障は長年、日米安保条約や米韓、米比各相互防衛条約などで米国の個別の同盟関係によって車軸(ハブ)の米国と放射状に細長い棒(スポーク)でつなげた『ハブ・アンド・スポーク』(Hub and Spoke)体制で守られてきた」

「バイデン政権は、この米国中心の2国間同盟をより重層的な『格子細工のような関係』にすることで、台湾や南シナ海を巡って威圧を強める中国に対抗する戦略のフォーカス(中心)に据えたのである」

「『ハブ・アンド・スポーク』体制を超えて、公式、非公式を問わず、同盟・友好国のネットワークを築く新しい方法を見い出したと言える」

 クリテンブリンク氏は、講演に次いで行われた質疑応答でさらに石破氏が提唱する「アジア版NATO」構想について語気を強めてこう言い切った。

「アジアNATO構想は少し性急すぎるだろう」

「こうしたコンテキストで集団的自衛権やバイデン政権が作り上げた『格子細工のような同盟』をさらに(NATOのような)公式な機構にさせるという論議は時期尚早だ」

「今、注力すべきことは、この地域に存在する公式、非公式の同盟関係の構造(Architecture)に投資する(Invest=時間、精力、財源の投下)ことだ」

「その成り行きを見守り、どういった結果を招くかをまず検証すべきだ」

reuters.com/incoming-japan-pm-ishibas-asian-nato-idea-test-us-diplomacy

rfa.org/asian-nato-japanese-prime-minister-kritenbrink