「移民は犬や猫を食べるのよ」と囁きトランプに言わせた30代女性の正体
善良な住民が大半のハイチ系移民には生命の危機も、侮蔑騒動の顛末やいかに
2024.9.16(月)
高濱 賛
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カリブ海の最貧国から来た移民への偏見差別
米大統領選の激戦州、オハイオ州のスプリングフィールド市(人口5万8000人)で複数の施設に対する爆弾脅迫が続き、市当局は9月12日、職員を避難させて市庁舎を閉鎖した。
市民には市庁舎周辺に近づかないよう呼びかけた。発端は、米大統領選候補テレビ討論での発言だった。
「ハイチ移民が(白人住民の)隣人の飼っているペットの犬や猫を殺して食べている」と主張したことに、「何者か」が市当局に抗議したものとみられる。
一部のハイチ系住民はテレビ討論以降、生命の危険を感じ、子供たちを学校に行かせないでいる。
ハイチはカリブ海にある島国で、ドミニカ共和国に隣接する最貧国。政情不安に加え、武装集団による政府機関への攻撃が頻繁に起こっている。
ここ3年あまりで1万5000人のハイチ系移民・難民が米国に合法的に移住している。
言葉の壁(公用語はフランス語およびクレオール語)はあるものの、同市周辺の工場や施設、農園などで働き、「まじめで勤勉な移民で警察の厄介になった者は一人もいない」(市関係者)とされていた。
彼らにとってバッドニュースと言えば、2023年8月、スクールバスのハイチ人運転手が事故を起こし、児童一人が死亡した事故があった(運転手は無免許運転だった)。
ドナルド・トランプ氏が、なぜハイチ移民が犬猫を殺して食べた、というショッキングな話を持ち出したのか――。
バイデン政権の移民政策を激しく批判してきたトランプ氏は、大統領選挙では移民問題への対応を任されたカマラ・ハリス副大統領のアキレス腱と見て、ネガティブ情報収集にエネルギーを注いできた。
今回の「ハイチ移民は犬猫を殺して食べた」という発言は、その格好の題材だったわけだ。
後で分かったことだが、この情報は右翼系のSNSが流したものだった。
討論会の際にもABCテレビのモデレーターは、「スプリングフィールド市当局はそうした事実を掌握していない」と発言を遮ったが、トランプ氏は発言を繰り返した。
同市のロブ・ルー市長は、「これに関する信頼に値するような報告を受けたことがない」と反論。
また、オハイオ州のマイク・デワイン知事(共和党)も「インターネットは時々おかしい情報を流す。我々は市長の言葉を信じなければならないと思う」と述べていた。
スプリングフィールド市から280キロ離れたカノン市で白人女性が動物虐待したという事件はあったが、これが右翼勢力の反ハイチ移民の動きに利用され、混同された公算大だ。
(springfieldnewssun.com/springfield-police-say-no-reports-of-pets-stolen-after-viral-social-media-post)
(thehill.com/springfield-mayor-denies-claims/)