「ポップの女王」と呼ばれるテイラー・スウィフト氏が米大統領選の討論会後に民主党ハリス陣営の支持を表明した。インスタグラムで2億8000万超のフォロワーを抱え若者に圧倒的な影響力があるスウィフト氏は、なぜ「反トランプ」を鮮明にしたのか。かつては政治的発言を控えていた同氏が苦悩の末にその立場を明確にした経緯や、「惨めな子なし猫(好き)女」の意味などトランプ陣営との因縁を解説する。
(楠 佳那子:フリー・テレビディレクター)
>>【写真】米TIME誌では「猫」とともに表紙を飾った
米東部時間10日夜、多数の米民主党支持者は「ついにこの時が来た!」とうれしい悲鳴をあげたことだろう。それは今後の大統領選の行方を占うと言われたトランプ、ハリス両候補者による初のテレビ討論の結果に、ではない。
米人気歌手で「ポップの女王」としても知られるシンガー・ソングライターのテイラー・スウィフト氏(34)が、討論終了直後、民主党・ハリス副大統領への支持を表明したことに、である。
ハリス陣営には待ち望んできた追い風であり、トランプ陣営には最も恐れていたメガトン級の大打撃だろう。彼女が候補者支持を表明するのかどうかは、ファンのみならず多くの注目を集めてきた。つい先日、スウィフト氏がトランプ支持者と見られる女性とテニス全米オープンの会場でハグを交わしていただけで「実はテイラーは隠れトランプ支持者では」との憶測まで飛び、ネットやメディアで大騒動に陥ったほどだ。
スウィフト氏はインスタグラムに討論会を視聴したことを述べた上で「2024年の大統領選挙でカマラ・ハリスと(副大統領候補の)ティム・ウォルズに投票する」と、支持を明確にした。スウィフト氏のインスタは2億8000万超のフォロワーを誇る。今年12月に終了する予定の同氏のコンサート「THE ERAS」ツアーは、昨年末までに10億ドルを超える史上最高の収益を上げた。多大なファン層を有する彼女の影響力は、計り知れない。
スウィフト氏の絶大な人気により、彼女の政治的発言が一定の破壊力を持ちうるということは、しばらく前から予測されてきた。2020年には同じくインスタでバイデン氏支持を明確にした上で投票に向けた有権者登録を促したところ、1日で3万5000人を超える人たちが登録を行った。彼女は今回も、フォロワーに有権者登録を呼びかけている。
スウィフト氏がハリス氏支持を表明したことにはいくつか理由があるが、大きな理由としてハリス陣営が、彼女自身の信条を守るために戦う「戦士」だからと記している。その信条とは、性的マイノリティへの支援や、また体外受精など、女性が自らの意思で自身の体について選ぶ権利の保護などだ。
特筆すべきはこの支持表明の投稿に、スウィフト氏がわざわざ愛猫のベンジャミン・バトンを抱きしめている画像を選んだことだろう。
そして投稿は「テイラー・スウィフト 子なし猫(好き)レディより」と締めくくられている。