「歴史の正しい側にいたい」

 その時のインスタでスウィフト氏は、人種、性別、性的嗜好にかかわらず「全ての米国人の尊厳のために戦う意志のない人物には投票できない」と宣言。現在も上院議員を務める当時の共和党候補者が、女性や同性愛者の権利を守ることを拒否してきたと糾弾し、そんな人物には不支持との立場を示した。

 この時の民主党への支持表明は、軽々しく行われたものではない。スウィフト氏を追った2020年のドキュメンタリー「ミス・アメリカーナ」では、彼女が初めて政治的発言を行うまでの曲折も描いている。

MTVビデオミュージックアワードを受賞したテイラー・スウィフト氏=2024年9月(写真:AP/アフロ)

 反トランプの立場を示すことに懸念を表すマネージメントに、その2年前のトランプ選出時、反対しなかったことが悲しいと話し、「私はこれが正しいことだとわかっている。私は、歴史の正しい側にいたい」と強い決意を熱っぽく語っている*3

*3Taylor Swift defiantly tells her team she will speak out against Donald Trump in resurfaced footage(INDEPENDENT)

 その後、これまでもスウィフト氏は、トランプ氏が独裁者であり、また白人至上主義者であると嫌悪感もはっきり示してきた。今回のハリス陣営への支持は、そう驚くべきものではないと見る向きも一部にはある。

 まだ優勢とは言えない民主党陣営へのスウィフト氏による強力な援護射撃は、11月の投票日に向けどう作用するのか。

 子なし猫好き女子を含め、スウィフティーズらの今後の動向も注視される。

楠 佳那子(くすのき・かなこ)
フリー・テレビディレクター。東京出身、旧西ベルリン育ち。いまだに東西国境検問所「チェックポイント・チャーリー」での車両検査の記憶が残る。国際基督教大学在学中より米CNN東京支局でのインターンを経て、テレビ制作の現場に携わる。国際映像通信社・英WTN、米ABCニュース東京支局員、英国放送協会・BBC東京支局プロデューサーなどを経て、英シェフィールド大学・大学院新聞ジャーナリズム学科修了後の2006年からテレビ東京・ロンドン支局ディレクター兼レポーターとして、主に「ワールドビジネスサテライト」の企画を欧州地域などで担当。2013年からフリーに。