トランプ陣営の「猫女」発言に反発、ディープフェイクも拡散される

 8月の拙稿を読まれた読者にはすでにお分かりだと思うが、これには共和党陣営への痛烈な皮肉が込められている。トランプ氏が選んだ副大統領候補のJ.D.バンス氏が、選出早々「民主党は子供を持たないという惨めな選択をして、猫を愛でるしかない惨めな女どもに牛耳られている」という趣旨の過去の発言を蒸し返され、大炎上したからだ。

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 バンス氏は先の、選挙前の大一番である両大統領候補のテレビ討論直前、自身が上院議員を務めるオハイオ州で「ハイチ系の移民が、人々のペットを拉致して食べている」という衝撃の偽情報もばらまいた。発言の真偽は、名指しされた地区の地元警察により速やかに否定されている。

 バンス氏は実は、共和党から移民や女性から票を奪う目的で、民主党陣営によって密かにトランプ氏の元へ送り込まれた破壊工作員なのではと勘ぐりたくなるほど、少々トランプ氏の足を盛大に引っ張りすぎな、オウンゴールの多すぎる人物である。望まれない妊娠の中絶や、体外受精に反対の立場も取っている。

 当然のことながら、バンス氏のこの「惨めな子なし猫好き女」という余計な発言は、キャリアや身体的な理由など、様々な背景により子供を持たない、そして「猫好きな女性」のみならず、幅広い層から集中放火を浴びた。そして、まだ独身で子供がおらず、現在キャリアにまい進しているスウィフト氏が猫好きなことは周知の事実でもあり、彼女がこの発言をどう捉えているかはすでに相当話題となっていた。

昨年末、米タイム誌「今年の人」に選ばれ、愛猫ベンジャミン・バトンと共に表紙を飾ったテイラー・スウィフト氏(画像:TIMEのホームページより)
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 スウィフト氏がインスタで、もう一つ民主党支持の理由として挙げたのが、トランプ氏本人が8月中旬ごろ、ディープフェイク加工されたスウィフト氏の画像を使い、あたかも彼女がトランプ支持であるかのような投稿をSNSで垂れ流したことだ。

 インスタでスウィフト氏は「最近私は、AIの『私』がトランプを支持するという偽の投稿をされたことを知った。AIに対する恐怖と誤情報拡散の危険性を、心底呼び覚まされた」と書いた。そして、こうした誤情報と戦う最も有効な手段は、彼女自身が民主党を支持するという「真実を伝えること」だと思い至ったともした。

 スウィフト氏のファンには一定数、トランプ支持者も存在する。スウィフト支持を取り付けたかのような8月の投稿には、AI画像の他にもスウィフトファンを表す「スウィフティーズ」のトランプ支持者というTシャツを着た女性らの画像もあげられた。こうした女性らは、本物のトランプ支持者のようだ。スウィフティーズ forトランプの女子による支援についてもトランプ氏はいそいそと「受け取ろう!」と引用している。

 しかし、今回当の本人から支持を否定されたことについてトランプ氏は「彼女はマーケットで、この代償を払うだろう」と発言。少々、気分を害された様子だ。