SNSで若者からの支持の取り込みを狙うハリス副大統領(写真:ロイター/アフロ)
  • 若者などに絶大な人気があるセレブの動向が米大統領選の趨勢を左右し始めた。
  • SNSでバズった英人気歌手チャーリーXCX氏の投稿「kamala IS brat」にハリス陣営は即座に“便乗”し、若者の支持を取り込む戦略にカジを切った。
  • 他方、トランプ陣営の副大統領候補バンス氏は、子供がいない女性に対する差別的発言で炎上。2020年の大統領選でバイデン氏を支持した、子供がいない「ポップの女王」テイラー・スウィフト氏がハリス支持を表明するかに注目が集まっている。

(楠 佳那子:フリー・テレビディレクター)

 米バイデン大統領が今年11月に予定されている大統領選挙からの撤退を表明して10日あまり。現職の大統領が再出馬の機会を放棄したのは、1968年にやはり2期目の大統領選に出馬しなかったジョンソン元米大統領以来、実に56年ぶりのことだ。

 81歳という高齢を懸念されたバイデン氏は遂に次世代にバトンを託し、大統領として残りの在任期間中その使命を全うすると国民に誓った。米国は国民自身の手で国を運営し、民主主義を守り続けるのだと示した引き際は、毅然としていた。

 他方、どこかの国では今年3月、時期選挙への不出馬を表明した際、その決断には年齢が関係するのかという質問をした記者に対し、公然と「お前もその歳来るんだよ」「馬鹿野郎」とヤクザ顔負けの暴言を吐いた、85歳の高齢議員がいたようである。バイデン氏の引き際を参考に今後は党をあげて、自らが国民の「しもべ」であり、公僕であることをわきまえてもらいたいものだ。

 バイデン氏の後任として大統領を目指すことになったカマラ・ハリス副大統領は、当初は「カリスマ性がない」などと評され、あまりパッとしなかった。米国初の「女性にして有色人種の大統領誕生」という歴史的偉業になる可能性はあるものの、ハリス氏に対する盛り上がりはいささか欠けていた。

 ところが、7月31日のAP通信とシカゴ大学全米世論調査センター(NORC)が発表したバイデン氏撤退表明後に行った調査によると、およそ8割に上る民主党員が、ハリス氏が民主党の大統領候補となることに満足、または非常に満足であると回答した。AP通信はこの要因について、一般の有権者を含み、民主党が迅速にハリス氏を党の「旗手」として団結したことにあると記している。

 その上、ハリス氏には強力な「援軍」が現れている。「現在世界で最もホットなポップ・スター」とも言われる英人気歌手のチャーリーXCXだ。

 ハリス氏が大統領選への出馬表明を行った数時間後、チャーリーXCXはXに自身の最新アルバムタイトルである「brat」を用い「kamala IS brat(カマラはbrat)」と投稿した。

 大統領選への出馬表明となったハリス氏自身の投稿は7月31日時点で2700万インプレッション。一方、チャーリーXCXの「kamala IS brat」という投稿のインプレッションは5400万にも上り、ハリス氏の倍という驚異的な注目度である。