民主党の副大統領候補として最有力視されているマーク・ケリー上院議員(6月4日撮影、写真:AP/アフロ)

3つのハンデキャップをものともせぬハリス

 1週間前までの米大統領選の状況が急変してきた。

 非白人人口が2045年には白人人口を抜いてマジョリティになることへの危機感もあって、「刑事被告人」でありながら白人の多数が支持する共和党のドナルド・トランプ候補が、支持率では民主党候補ジョー・バイデン現職大統領に差をつけていた。

brookings.edu/the-us-will-become-minority-white-in-2045-census-projects/

 ところが、高齢のバイデン氏が選挙戦から撤退し、カマラ・ハリス副大統領を大統領候補の後継者に推薦したことで、黒人・インド系・女性・現職などのハンディキャップを乗り越え、ハリス候補が支持率ではトランプ氏とほぼ互角につけている。

 トランプ氏やJ・D・バンス副大統領候補は、ハリス氏を「とてつもない馬鹿者」(Dumb as a Rock)「子供のいない猫好き女」(Childless Cat Lady)「実績なき自惚れ女」(Smart Aleck Crack)などと口汚く罵っているが、ハリス氏に対する若者や女性、非白人からの人気はうなぎ上り。

 それに伴う政治資金も1週間で2億ドル(約308億円)を集めた。

reuters.com/kamala-harris-campaign-raises-200-million-one-week

 ハリス氏も検察官、州司法長官などの経歴を踏まえて「私は刑事被告を追及することには慣れている」と豪語して、支持者たちから拍手喝采を浴びている。

(こうした演説はバイデン氏にはできない)

 大統領選まで100日を切って、政策論争もさることながら両者による誹謗中傷合戦はこれから一層激化しそうだ。

 どんなキャッチフレーズが飛び出すか、興味津々だ。

 バイデン氏がトランプ氏に負けていた激戦州7州の支持率調査では、ペンシルベニア、ミシガン、ウィスコンシンで互角に持ち込み、全米レベルでは45%対44%で勝ったり47%対49%で負けたりしている。

 これまで「もしトラ」と騒いでいた米メディアからも「もしハリ」を予想する者も出てきた。

 そうした中、シカゴ大学は報告書「Chicago Project on Security and Threats」を公表、「トランプ勝利のためなら暴力も正当化できると唱える米国民は1800万人いる」と警告している。

 逆に「トランプ再選を阻止するために暴力に訴えることも辞さない」とする者は2600万人いることも指摘している。

 トランプ氏を狙う第2、第3の狙撃者はまだまだいるだろうし、その銃弾はハリス氏にも向けられているのだ。

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