SNSでバズる「カマラ」

 近年、若い有権者の獲得に苦戦してきたという民主党のハリス陣営はこの機を逃さなかった。公式Xアカウントのヘッダーをアルバムbratと同色のライムグリーンに、また文字フォントもアルバム同様に変更し、チャーリーXCXの援護射撃に呼応した。

 他にもケイティ・ペリー氏やジョン・レジェンド氏など著名アーティストらが続々とハリス氏支持を表明。過去のハリス氏の音声や笑い声が人気ミュージシャンの音源にリミックスされるなど、SNS上「カマラ」はバズりに成功した。

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 先のフィナンシャル・タイムズのコラムでは、チャーリーXCXによるハリス氏の「brat呼ばわり」が「米有権者の中に何年も眠っていた政治的エネルギーを、再び目覚めさせた」としている。そしてこのbrat旋風が、このところの米国を取り巻いてきた社会の分断や、前大統領に対する前代未聞の有罪評決、また各地で続く戦争などの苦難などよりも、政治や人生そのものが、「実は楽しいものかもしれない」ということを思い出させたとまで書いている。

 確かに、つい最近まで7人の孫がいる81歳の現職対、10人の孫がいる78歳の前大統領による「おじいちゃん対決」や、口を開けばヘイトをまき散らかすトランプ戦略などに、若い有権者はうんざりし、自身との接点を見出すことが不可能だったのではないだろうか。

 また着目したいのは、2016年、同じく米国初の女性大統領候補だったヒラリー・クリントン氏の当時のイメージだ。初の黒人大統領を産んだ米国で、次は初の女性大統領と期待が高まった。その一方で、クリントン氏には元ファースト・レディーから国務長官を務めた経歴など、少々「エリートすぎて鼻持ちならない人物」というイメージもつきまとっていたと記憶している。

 だからこそ、まだ還暦も迎えていないハリス氏がZ世代に親しめる気さくさをアピールする戦略は、成功しているのかもしれない。