- ロシアや米国、ドイツなど7カ国は8月1日、冷戦後最大規模となる囚人24人の身柄を交換した。
- 米ウォール・ストリート・ジャーナル紙のジャーナリストらがロシアとベラルーシから解放された一方、ロシアはドイツで収監されていた「プーチンの殺し屋」などを取り戻した。
- プーチン大統領の息のかかった「暗殺部隊」は欧州などで暗躍してきたとされ、今回の囚人交換がロシアの工作活動を勢いづかせるのではとの懸念がある。
(楠 佳那子:フリー・テレビディレクター)
8月1日、米欧露にまたがる「冷戦後最大規模」という囚人の身柄交換が実施された。ロシアで拘束されていた米国やドイツ、ロシア国籍などの男女15人と、ベラルーシで拘束されていたドイツ人男性1人が西側へ引き渡された一方、欧州や米国で収監されていたロシア人8人がプーチン大統領に迎えられ、帰還した。
ロシアから引き渡されたのは、米国のジャーナリストや元米海兵隊員など、また反プーチン政権のロシア人活動家などに加え、反逆罪や「大麻入りグミを所持していた」など、様々な容疑で拘束されていた複数のドイツ人らだ。更に、ロシアの同盟国であるベラルーシで「テロと傭兵活動」を行なった容疑で、死刑判決を受けていたドイツ人男性も含まれている。
ロシアで収監されていた人たちの中で、特に欧米メディアで注目を集めていたのは、米ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)のエバン・ゲルシコビッチ記者(32)だろう。16カ月ぶりに同氏が自由の身になったことを伝えられたWSJの報道フロアでは、同僚らから大きな拍手が起きた*1。
*1:Wall Street Journal newsroom reacts to Gershkovich’s release(AP)
ゲルシコビッチ氏は両親が旧ソ連からの移民で、幼い頃からロシア語に触れて育った。2017年からモスクワに在住し、仏AFP通信などの記者として活動した後、2022年からWSJのモスクワ特派員として勤務。ロシア外務省から外国特派員として正式な記者資格を得ていた。
しかし去年3月、エカテリンブルクでの取材活動中に「米国の指示により」ロシア軍産複合体企業に関する国家機密の情報収集を行なっていたとして、スパイ容疑で現行犯逮捕された*2。