ロシアは秘密工作を活発化させているとみられる(写真:Anelo/Shutterstock)
  • ロシアが欧州域内で秘密工作を活発化させている懸念が出ている。ポーランドではウクライナのゼレンスキー暗殺計画を支援した疑いのある男が確保された。
  • ドイツでもスパイ容疑で軍用インフラなどへの攻撃計画を立てた疑いでロシアとの二重国籍の男らが逮捕されている。
  • 欧州域内に逃れた反プーチン派の活動家の安全も脅かされている。兵役を逃れたロシア人が大量に欧州に流入しており、安全保障上のリスクになっているとの見方もある。(JBpress)

(楠 佳那子:フリー・テレビディレクター)

 ポーランドのドゥダ大統領は22日、北大西洋条約機構(NATO)が東部強化のためポーランドに核配備を行うと決定した場合、受け入れる用意があると表明した。

 ロシアが隣国のベラルーシに戦術核兵器を配備し、ポーランドやリトアニアと国境を接するロシア領カリーニングラードには核兵器搭載可能なミサイルを配備したことなどに対抗する措置とみられる。ドゥダ氏はポーランドの日刊紙「ファクト」との22日付インタビューで「我々はNATO同盟国であり、この点からも義務を負う」と話した。

 現状ではポーランドは核保有国ではなく、米国も同国に核兵器を配備していない。だがポーランドは昨年、NATOの核共有計画への参加希望を表明。モラウィエツキ首相は昨年6月の会見で、「プーチンがさまざまな脅しをエスカレートさせている中で、手をこまねいている訳にはいかない」と述べた。

 これに対しロシアは即座に、同国軍が状況分析を行い「(ロシアの)安全確保のため、必要なあらゆる対抗措置を講じる」(ペスコフ大統領報道官)と反発した。

 両国の緊張の高まりは軍事面にとどまらない。4月に入り、ロシアの諜報機関の命を受けたとみられるポーランド国籍の男数人が、ポーランドで相次ぎ逮捕されている。

 17日、ロシアのエージェントによるウクライナのゼレンスキー大統領暗殺計画の支援を申し出たとして、ポーランド人1人が確保された。男はロシア側に対し、ウクライナ国境に近いポーランド南東部にある空港の詳細を伝えようとしたとされている。

 この空港は現在米軍の管理下にあり、ゼレンスキー氏も頻繁に使用しているという。英ガーディアン紙によれば、この空港はウクライナへの軍事・人道支援物資を運ぶ玄関口でもある。

 ポーランド検察庁は、この男がロシアの「軍事諜報機関のために行動する用意があると宣言し、ウクライナ戦争に直接関与しているロシア国民と接触したことが判明した」との声明を出している。

ロシアのプーチン大統領(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 19日にはポーランドのトゥスク首相が、ロシアがらみの事件に関わったとして別のポーランド人2人の逮捕を発表した。ロシアの反体制派指導者で2月に獄死したアレクセイ・ナワリヌイ氏の側近レオニード・ボルコフ氏が、先月リトアニアで襲撃された事件の実行犯であるという。

 ボルコフ氏は亡命先であるリトアニアの自宅付近でハンマーによる襲撃を受け、腕を骨折するなど重傷を負った。リトアニア当局の声明によると、2人は4月3日、ポーランドの首都ワルシャワで確保された。

 トゥスク氏はさらに、ロシアの命を受けて襲撃を指示したベラルーシ国籍の人物も逮捕したとしている。