米大統領選で民主党ハリス陣営の「口撃」手法が注目を集めている。共和党トランプ陣営からの誹謗中傷などを「Weird(ヘン)」と一蹴し、まともに取り合わない姿勢が支持者らに大ウケだ。トランプ氏は反撃をするつもりが空虚な放言を重ねるなど明らかに動揺している様子で、海外有力メディアもWeird戦法を大真面目に分析している。果たして、テレビ討論会でトランプ氏とハリス氏はどんな戦いをするだろうか。
(楠 佳那子:フリー・テレビディレクター)
米東部時間9月10日夜、大統領選候補者によるテレビ討論会が実施される。大統領選まで2カ月を切ったタイミングでのハリス米副大統領とトランプ前大統領による一騎打ちだ。選挙戦の行方を大きく左右しかねない、大一番と言える。
意外なことに、両者が直接顔を合わせるのは今回が初めてだ。自身への注目を集めるのが大好物で、政敵について早口で真偽不明な誹謗中傷をまくし立てるトランプ氏のヘイト&フェイク戦法は、周知の通りだ。
ハリス陣営は、この「トランプ節」をどう迎え討つのか。
討論のルールに関し、最近まで両陣営が激しく対立していたポイントがある。相手候補が発言している際、もう片方の候補のマイクを消音にするかどうかだ。ハリス陣営は消音させないことを望んだ。トランプ氏が生中継の討論で、選挙戦に悪影響を及ぼしかねない致命的な失言で自滅することを狙ったからだ。
以前はトランプ氏の熱狂的な支持者だった極右の評論家はSNSで、このマイク消音問題に関してFワードまで使ってトランプ氏に「黙ることを学べ」と警告している。英インディペンデント紙はこれを「極右・トランプ氏に『黙れと懇願』」と伝えた*1。
*1:Ann Coulter begs Trump to ‘learn to STFU’(THE INDEPENDENT)
ハリス氏が大統領候補となって以来、僅差とはいえ風は民主党陣営に吹いている。このタイミングで、トランプ氏がこれ以上のイメージダウンにつながる荒唐無稽な発言を生配信でしかねないと、陣営が頭を抱えるのも納得できる。
例えばトランプ氏は7月31日、ハリス氏が政治的な目的で「最近黒人になり変わった」と、まるで突然変異でも起こしたかのような珍妙な主張を繰り広げた。原文は「all of a sudden she made a turn and she became a black person」だ。東京新聞はこれに特撮ヒーローよろしく「変身」と、秀逸な訳の見出しをつけた*2。