9月12日、アリゾナ州ツーソンのリンダ・ロンシュタット・ミュージックホールでの選挙イベントで演説する共和党大統領候補ドナルド・トランプ元大統領(写真:AP/アフロ)
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(舛添 要一:国際政治学者)

 9月10日夜、アメリカ大統領候補のドナルド・トランプとカマラ・ハリスのテレビ討論会が行われた。討論会直後にCNNが発表した調査では、討論会を見た有権者登録者600人のうち、ハリス優勢が63%、トランプ優勢が37%であった。しかし、討論会によって投票先が変わると答えた人は、わずか4%だった。

テイラー・スウィフトの影響力

 テレビ討論会は、選挙の結果に影響を与えることがある。

 1960年の大統領選では、民主党候補のジョン・F・ケネディと共和党候補のリチャード・ニクソンが史上初のテレビ討論を行ったが、ニクソンは病み上がりで、しかもノーメイクであり、若くて、はつらつとしたケネディに敗れた。ケネディはメイクもして、服装にも気を遣った。政策内容よりも、イメージが決定打となったのである。

 これ以来、候補者たちは、いかにテレビ映りをよくするか、コンサルタントに依頼して、衣装、メイク、身振り手振り、話し方など、イメージアップにつながる様々なアドバイスを受けるようになった。

 今回のトランプ・ハリス対決もその例外ではなかった。立ち振る舞いが、ハリスの方がトランプよりも評価されたのである。

9月10日、米国ペンシルベニア州フィラデルフィアで開催されたABC主催の大統領討論会に参加する共和党大統領候補のドナルド・トランプ元大統領と民主党大統領候補のカマラ・ハリス副大統領(写真:ロイター/アフロ)
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 世界的に人気のある歌手のテイラー・スウィフトは、カマラ・ハリスを支持すると、インスタグラムで発信した。彼女のアカウントのフォロワーは2億8300万人である。投稿には、猫を抱いた自分の写真を載せ、「テイラー・スウィフト、子どものいない猫女(Taylor Swift Childless Cat Lady)」と記した。

 これは、共和党の副大統領候補、J.D.ヴァンスが、「子どものいない猫女たちは惨めな人生を送っている」と発言したことを念頭に置いた痛烈な皮肉である。

 スウィフトは、2020年の大統領選ではバイデンを支持している。若者に圧倒的な人気を誇る彼女のハリス支持は一定の影響を持ちそうである。スウィフトは、有権者登録を速やかに行うことを呼びかけたが、1日も経たないうちに、早速その効果が出て、彼女が作成し共有するURL経由で有権者登録サイトにアクセスした人は33万7826人にのぼった。