政治に無関心な若者の中には、スウィフトに従ってハリスに投票する者が増えるかもしれない。選挙戦が接戦になればなるほど、僅かな票の差が勝敗を左右するので、軽視はできないであろう。

 ただ、イーロン・マスクのように、トランプを支持する有名人も多数いるので、スウィフト効果だけが突出するのではない。

 トランプは、スウィフトについて、「いつも民主党候補を支持しているように見えるし、その代償を市場で支払うことになるだろう」と反論している。

意見を変える人は少ない

 私がむしろ注目するのは、先のCNNの調査で、討論会を見て投票先を変更するという人は4%しかいないという数字である。

 今回のテレビ討論会については、トランプ支持の保守派メディアすら、ハリス勝利と評価したが、それが有権者の投票行動につながるかどうかについては、私は懐疑的である。それは、狂信的とも言える支持者を変心させるのは不可能だからである。

 とくにトランプ支持者が、“Make America Great Again”と熱狂的にスローガンを連呼する様子を見れば、テレビ討論会を見ただけで、彼らが簡単にトランプを捨ててハリスに鞍替えするとは思えないからである。

 典型的なのは、今の生活に多くの不満を持つ白人層である。移民の過剰な流入によって職を奪われたり、自分の住む町の治安が悪化したり、また安価な外国製品によって勤め先の工場が閉鎖されたりする体験をしているからである。

 トランプは、彼らの支持を得るために、国境に壁を作るなどして移民の制限を行うこと、関税を引き上げて国内産業を保護することなどを政策の柱に据えるのである。地球温暖化対策よりも、国内の石炭や石油の採掘で雇用の場を確保することを優先する。