トランプに熱狂する“ヒルビリー”たち

 現状に不満を持つ白人労働者の支持を得るために、トランプはJ.D.ヴァンスを副大統領候補にした。彼は、2016年に『Hillbilly Elegy:A Memoir of a Family and Culture in Crisis(ヒルビリー・エレジー:アメリカの繁栄から取り残された白人たち)』(邦訳・J.D.ヴァンス著(関根光宏・山田文訳)『ヒルビリー・エレジー』、光文社、2017年)という本を書いた。

 ヴァンスは、ケンタッキー州・オハイオ州のアパラチア山脈地方、ラストベルト(錆び付いた工業地帯)で育ちながら、イェール大学のロースクールを卒業してアメリカンドリームを体現したが、この本はそれまでの過酷な家庭環境や衰退するコミュニティについて記した回顧録である。

「ヒルビリー」というのは田舎者の蔑称であり、「レッドネック(首筋が赤く日焼けした白人労働者)」とも「ホワイトトラッシュ(白いゴミ)」とも呼ばれるが、ヴァンスの故郷の人々がそうである。彼らこそが“Make America Great Again”と訴えるトランプ候補を熱烈に支持して、2016年に大統領の座に押し上げたのである。

共和党副大統領候補のJ.D.ヴァンス上院議員。「子どものいない猫女たちは惨めな人生を送っている」との発言が反発は物議を醸し、テイラー・スウィフトからもSNSで当てこすられた(写真:AP/アフロ)
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 この本はベストセラーになり、ヴァンスは一躍有名になって、トランプの支援を受けて2022年のオハイオ州の上院選に出馬し、当選した。そして、今や副大統領候補となったのである。