石丸伸二にも「狂信的な信者」

 7月7日の都議会選挙では小池百合子が3選を果たしたが、蓮舫を抑えて2位に躍進したのが、石丸伸二である。

 小池も蓮舫も、使い古された「古い政治家」で、積極的に選択したくなるような駒ではない。そこに、上手く位置取りしたのが前安芸高田市長の石丸で、「若さ」、「新鮮さ」を売り物に、何か変えてくれるのではないかとう期待感を有権者に持たせたのである。

 国会議員の河井克行夫婦の不祥事の絡みで市長が去った後、新鮮なイメージで市長に当選した。当選すると、市議会との対決姿勢をアピールし、それをSNSで全国に発信し、一躍「時の人」となった。しかし、市長としての実績には見るべきものは少ない。

 任期を全うせずに、都知事選に出馬したことも批判されている。石丸の次を選ぶ市長選挙では、反石丸派が勝っている。

 都政の政策についても、石丸は、抽象的な一般論のみで、具体的な政策を明らかにしなかった。

 記者らとの質疑応答についても、正面から答えず、はぐらかしてしまうという「石丸構文」も問題となっている。これでは、都知事としても、また国会議員としても真っ当な仕事はできないであろう。

 そして、今批判に晒されている兵庫県の斉藤元彦知事が辞職、あるいは失職する可能性があるので、その後釜に推したいという声もある。

 都知事選後に、マスコミ、とくにテレビは、突然湧き出した「石丸ブーム」に便乗して、彼を持ち上げ、番組に呼んで、スポットライトを浴びせかけたが、問題はSNSを通じて彼の熱烈な支持者となった人々である。

 彼らは狂信的な石丸の信者であり、批判を許さない。まさにホッファーが呼んだ「忠実な信者」である。ホッファーは、ナチズムを支持した大衆運動を分析した結果、true believerという概念を提示したのであるが、石丸支持者の言動を見ていると、まさに、ホッファーの指摘どおりである。

 アメリカでも日本でも、現代民主主義、ポピュリズム、衆愚主義の闇は深い。

【舛添要一】国際政治学者。株式会社舛添政治経済研究所所長。参議院議員、厚生労働大臣、東京都知事などを歴任。『母に襁褓をあてるときーー介護 闘いの日々』(中公文庫)『憲法改正のオモテとウラ』(講談社現代新書)『舛添メモ 厚労官僚との闘い752日』(小学館)『都知事失格』(小学館)『ヒトラーの正体』『ムッソリーニの正体』『スターリンの正体』(ともに小学館新書)『プーチンの復讐と第三次世界大戦序曲』(インターナショナル新書)『スマホ時代の6か国語学習法!』(たちばな出版)など著書多数。YouTubeチャンネル『舛添要一、世界と日本を語る』でも最新の時事問題について鋭く解説している。