
日立製作所が営業改革を進めている。特定の顧客に対し、日立グループのさまざまな事業部門を横断した営業チームを作り、窓口を一本化する。同社はこれまでにも何度か同様の取り組みを試みたものの、体制の構築には至らなかった。今回はなぜ実現できたのか。日立製作所 代表執行役 執行役専務 CMOの長谷川雅彦氏に話を聞いた。
多様な事業メンバーが、序列なく議論する
――日立製作所(以下、日立)は、大手顧客向けの新たな営業体制を作りました。どのような理由で、どんな体制を作ったのでしょうか。
長谷川雅彦氏(以下敬称略) 当グループにはさまざまな事業があり、それらはビジネスユニット(以下、BU)という形で独立しています。これまでは同じお客さまに対して、各BUがそれぞれ営業を行ってきました。その体制を変え、お客さまごとにBUを横断した専任の営業チーム(アカウントチーム)を作り、窓口を一本化することにしました。

日立グループ全体のさまざまな製品やサービスを複合的に「One Hitachi」でお客さまに提供できれば、グローバルでさらなる成長を目指せると考えました。同時に各BUのサイロ化から生まれる“非効率”という弊害、例えば同じお客さまに対して、日立の各BUの担当者がそれぞれ足を運び個別最適のアプローチを取ることも避けられるのではという思いがあったのです。
日立が力を入れているLumada(ルマーダ)事業を伸ばすためにも、この方法は重要でした。なぜならLumadaは、デジタルを横串に、日立グループのさまざまな技術・サービスをつないでお客さまの課題を解決するコンセプトです。そのためにはBUの枠を超えることが核になるのです。
2022年度にこのプロジェクトの構想を開始し、2023年度から実行しました。まずはパイロット的に小規模で試験導入しようと、この営業手法が適していると考えられるお客さまを13社設定し、アカウントチームを作りました。翌年には、対象のお客さまを17社に拡大しています。
――アカウントチームはどういった構成なのでしょうか。