ネガティブな感情を煽る時代は終わった

 フレッド・ホローズ財団は、視覚障害や失明を防ぐための人道的な活動を行う団体だ。したがって、その活動は緊急支援や医療に関連するものが中心で、ソーシャルメディア上の投稿についても、特定のトピックに限定された話題が扱われることが多かった。

 そのため、共感や緊急性を引き起こす「喜び」や「悲しみ」が、短期的な寄付の動機となりやすかったと考えられる。

 一方でオークランド大学は研究機関であり、教育と研究に関連する活動を行っている関係上、ソーシャルメディア上の投稿についても幅広いトピックが扱われる傾向にあった。

 そうした教育や研究に関する話題は、即時的な感情に訴えるものではなく、長期的な目標や成果に対する支援が求められるため、感情の影響がフレッド・ホローズ財団とは異なる結果を生み出したと考えられる。

 また、ツイートの傾向にも違いがあった。フレッド・ホローズ財団の場合、マーケターが生成したコンテンツよりも、ユーザーが生成したコンテンツのほうが圧倒的に多く、リツイート数も多かったそうだ。

 それに対しオークランド大学では、同じくユーザーにより投稿されたコンテンツのほうが多かったものの、リツイート数がフレッド・ホローズ財団の場合よりもずっと多く、ユーザーによるコンテンツの広がりが大きいという特徴が見られた。

 従来の感情分析では、たとえば特定のトピックに関するツイート全体の傾向を分析し、それが「ポジティブ」か「ネガティブ」か、あるいは「中立」かを確認するといった、比較的単純なものが多かった。

 しかし生成AIの力を活用して、ソーシャルメディア上の投稿一件一件を詳しく分析し、そこに込められた感情を把握できるようになったことで、このような複雑な分析が可能になったわけである。

 特に、単純にネガティブな感情を煽れば良いというわけではない、という結果になったことに注意が必要だろう。