「もしトラ」リスクは既に顕在化
2024年11月5日の投票日が近づくにつれ、民主党のジョー・バイデン大統領と共和党のドナルド・トランプ前大統領による米大統領選挙戦は激しさを増している。
現政策の継続が見込まれるバイデン氏勝利の場合よりも、国内政策から外交政策に至るまで、大きな政策転換が予想されるトランプ氏勝利の影響への関心が高まっているのは自然なことだろう。
もしトランプ氏が再選したらどのような政策が打ち出され、日本や日本企業はどのように対応すべきか。いわゆる「もしトラ」リスクだ(図表)
2025年1月の次期大統領の就任に向け、日本だけでなく世界が「もしトラ」リスクへの備えを始めている。しかし、注意しなければならないのは、「もしトラ」リスクは次期大統領就任前にもその影響が生じるおそれがあり、その一部は顕在化しているということである。
現政権の政策への批判を強めるトランプ氏への対抗上、バイデン政権が政策の修正を図っている。その意味で、「もしトラ」リスクは既に影響を及ぼし始めていると言えるだろう。
選挙戦では、バイデン氏とトランプ氏は、どちらがより「米国第一」であるかを競っている。両氏はともに、自らの政策がより米国の産業を守り、労働者を保護し、雇用を創出すると訴えている。
トランプ氏は、政権批判を強め、その実行可能性の高低を問わず、当選した場合に実行する新たな政策を打ち出している。他方、現在政権の座にあるバイデン氏は、政策を実行できる立場にあり、その実績が問われている。
気候変動(脱炭素)政策のように、両氏の政策が真っ向から対立するものもあるが、移民政策のように、トランプ氏が主張する政策を取り込む形でバイデン政権が政策の修正を図るものもみられる。
政権発足以来、寛容な移民政策をとってきたバイデン政権は、不法移民急増への国民の不満が高まり、トランプ氏が国境封鎖や「国境の壁」建設、不法移民の摘発強化・強制送還等を主張する中で、中止していた「国境の壁」の建設再開の方針を表明するに至っている。
同様のことが通商政策においてもみられる。4月17日のバイデン大統領の演説は、これを如実に示すものであった。