ディズニーは「古い作品の中の差別」とどう向き合っているか?

 先に述べたディズニーも、ピクサーと同様に様々な批判を浴びる中で、表現や演出における人権の問題を意識し、取り組みを強化してきた経緯がある。

 例えば、1953年に公開されたディズニーの長編アニメ「ピーター・パン」には、ネイティブ・アメリカンの蔑称である「レッドスキン」という言葉が出てくる。他にも「ダンボ」など昔の作品には、今の価値観に照らしてみれば差別的と取れる表現が少なくない。

 こうした過去の作品に対する批判を前に、ディズニーは「Disney+」での配信の際に、過去作品に含まれる差別やステレオタイプな見方について警告するメッセージを出すようになった。

 それも、当初は「この番組は、当時制作されたものをそのまま掲載しています。時代遅れの文化的描写が含まれている場合があります」という表現に留まっていたが、2020年からは「この番組には、人々や文化に対する否定的な描写や虐待が含まれています。これらのステレオタイプは、当時も今も間違っています」と、より踏み込んだ警告になっている。

 加えて、「コンテンツを削除するのではなく、その有害な影響を認め、そこから学び、より包括的な未来を共に創るための会話を喚起したい」とのメッセージも追加されている。

 このメッセージは、ディズニーが推進する「Stories Matter」というイニシアティブの一環として発信されており、「過去を変えることはできないが、過去を認め、学び、明日を創造するために共に前進する」ための宣言と位置付けられている。過去作品を公開したいがための単なるエクスキューズではないのは明らかだ。

 このように、ディズニーやピクサーは、様々な失敗を繰り返しながら「エンタメ作品における人権や倫理、文化の扱い方」という問題に向き合ってきた。その結果として、コンテンツに対するカルチャーチェックなど、内部統制のための仕組みを強化してきたのだ。