カオスな都知事選の選挙ポスター。NHK党が掲示板をジャック。ほぼ全裸女性のポスターも=一部加工しています(写真:Pasya/アフロ)
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過去最多の56人が立候補している東京都知事選(7月7日投票)で、思わぬ事態が発生しています。候補者と別人の写真を使ったり、ほぼ全裸の女性の写真を使ったりする例がたくさん出たためです。SNSには「選挙目的とは思えない」「珍獣博覧会だ」といった声が相次ぎ、都選管には苦情が殺到しました。現行法では対応できないため、法改正を急げという意見も出ています。都知事選のポスター問題はいったい何を問うているのでしょうか。やさしく解説します。

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「ほぼ全裸の女性」「風俗店の営業」も

 今回の東京都知事選では、現職の小池百合子氏が3選を果たすかどうかに注目が集まっています。そしてもう1つ、6月20日の告示と同時に話題をさらったのが掲示板に貼られたポスターの数々です。

 そもそも今回の都知事選では、候補者数が都選管の想定よりも多くなり、ポスター掲示板の区画が不足。届け出順が49番目以降の候補者にはクリアファイルなどを支給し、掲示板の周囲に継ぎ足すかたちで掲示させています。

 それだけでも過去に例のない出来事だったのに、告示後は物議を醸すポスターが次々と張り出され、主要候補者の論戦がかすむほどの騒ぎになりました。

 問題視されたポスターはさまざまです。

 ある男性候補のポスターには、候補者本人ではなく、ほぼ全裸の女性が登場。「表現の自由への規制はやめろ。」「我々はこの腐った社会を揶揄し続ける。」などと記されていました。

 これに対し、都選管には「公共空間なのに信じられない」「通学路にもこのポスターを掲示したのか」といった批判が殺到。警視庁は東京都迷惑防止条例違反(ひわいな言動)に当たる恐れがあるとして男性候補に警告を出し、陣営側もこのポスターを順次剥がしました。

 最も物議を醸したのは政治団体「NHKから国民を守る党」(N党)のポスターです。関係団体も含め24人が立候補したN党は、ホームページなどで「あなたのオリジナルポスター24枚を貼ってみませんか」と告知。一定の金額(告示日以降は2万5000円以上)をN党に寄付した人には都知事選の掲示板(1カ所につき最大24枚)にポスターを貼る権利を与えるとして寄付を募っていました。

 これに応じた人が都内の掲示板をあちこちでジャックし、さまざまなPR活動に使ったのです。風俗店の営業用やペットの写真などに加え、霞が関の官庁街には特定の省庁を批判するポスターも現れました。

 掲示板の中央部を取り囲む25番から48番の24区画がN党側のスペースですから、同じデザインのポスターを24枚貼り出したことで、まさに公営掲示板をジャックしたかたちになったのです。

 これらについても、警視庁は東京都の迷惑防止条例や風営法違反の恐れがあるとして、政治団体側に警告を発しています。